まず、前年度までに行ったマイクロアレイデータの解析を行った。ケロイド由来線維芽細胞初代培養株3株におけるコントロール群と脱メチル化酵素(5-aza-dC)処理群において、脱メチル化酵素処理群において10倍以上発現が上昇している遺伝子は153種類存在した。さらに、プロモーター領域にCpGアイランドを有し、かつX染色体上に存在しない遺伝子は、36種類存在した。この36種類の遺伝子について、ケロイド由来線維芽細胞初代培養株におけるコントロール群、脱メチル化酵素処理群、脱メチル化酵素+ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬処理群の遺伝子発現量を比較したところ、脱メチル化酵素とヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の処理によって相乗的に遺伝子発現量が上昇(脱メチル化酵素処理群と比較して2倍以上)した遺伝子は、8種類存在した。その中でも特に、脱メチル化酵素とヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の処理によって遺伝子発現量が180倍に上昇した遺伝子Xについて解析を進めた。正常皮膚由来線維芽細胞初代培養株とケロイド由来線維芽細胞初代培養株について、遺伝子Xの発現解析を行ったところ、正常皮膚由来線維芽細胞と比較してケロイド由来線維芽細胞では遺伝子Xの発現量が少なかった。以上よりケロイド由来線維芽細胞では、遺伝子XのDNAメチル化による発現抑制が起きているものと考えられた。しかし、ケロイド由来線維芽細胞より抽出したゲノムDNAにおけるMethylation specific PCRでは、メチル化バンドと非メチル化バンドの両方が確認された。これは線維芽細胞初代培養株がヘテロな集団であり、正常な線維芽細胞とケロイドの原因となる線維芽細胞(=遺伝子X発現低下細胞?)が混在しているためと考えられた。
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