研究課題/領域番号 |
25670753
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
栗田 昌和 杏林大学, 医学部, 助教 (20424111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血管奇形 / 初代培養 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
本研究では臨床検体から得られる初代培養細胞を用いて動静脈奇形の病態生理を調べる。血管奇形の病態生理に不明な点が多い原因として,病変の主座である血管内皮の初代培養細胞の単離の困難さがある。基本的な初代培養血管内皮細胞確立の手法をとしてまず、Rho-kinase inhibitorであるY27632(以下Yと略する)の応用を試みた。倫理委員会の承認を得たプロトコールに基づき,手術中に摘出した血管奇形の病変組織を用いて、検体を酵素分散法で処理、血管内皮細胞用培地(EGM2)で培養した。継代ごとにCD31を指標に磁気分離装置(MACS)でソーティングを行い,CD31+細胞の占有率が99%以上となるまで継代・ソーティングを反復し,純粋な血管内皮細胞の初代培養を確立した。静脈奇形の5例をサンプルとして、同一量のサンプルからスタートし,基本培地のみの場合(Y-)とYを加えた場合(Y+)の細胞数を比較した。血管奇形の検体から血管内皮の初代培養細胞の単離に成功した。各症例についていずれのサンプルについても,Yの使用により分裂回数を示すpopulation doublingがはY+の方がY-よりも上昇した。また、Yの使用により細胞倍加数が1.5倍から11倍に上昇した。より定量性の高い方法として,MTT assayを用いて検証し,Y+培地細胞の方がY-培地細胞よりも増殖能が高いことが裏付けられた。本法により,限られた量の検体から、従来法よりも効率的に初代培養・血管内皮細胞を採取できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、動静脈奇形組織由来の初代培養細胞を用いて行うものであるが、初年度のうちで、初代培養確立方法として、非常に効率の良い方法を同定することができた。 当該手法についてデータを収集することのみでもひとつの結果を提示することができる上、同法の開発によって、順調に臨床検体の収集が進んでいることから、研究は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該初代培養方法におけるY27632の作用機序を明らかにすることによって、同方法をより広く一般に用いられる方法にする。現在cellular scenescence関連因子の関与を調べており、Y27632はscenescenceを抑制することが示唆されつつある。データを煮詰めて、これをひとつの業績として提示する。 また、収拾している動静脈奇形由来血管内皮細胞および対象細胞については、当初計画に従い、網羅的遺伝子解析を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも、効率よく初代培養細胞検体を収集する方法の開発に、早期に成功したため。しかし、検体自体の分子生物学的解析は、本年度中には行っていない。 サンプルが収集しきった段階で、遺伝子発現解析をはじめとする分子生物学的解析を計画したことから、予算の分配は次年度に移行した。特にコストのかかる解析が研究に後半となるため、特別余剰などが生じる予定はない。
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