研究実績の概要 |
臨床的に重篤な症状を呈することがありながら、確立した治療方法の存在しない軟部組織の動静脈奇形に対する治療方法の開発の第一段階として、病巣局所の切除組織検体から病態の主座をなすと考えられる血管内皮細胞を単離する手法を開発した。 最適化を重ね、1) 広く一般に施行可能である酵素分散法を用いて、2) 混在する線維芽細胞、間葉系細胞を効率的に除去し、3) 機能的解析に十分な量の細胞数を確保する方法を確立した。特に培地中にRho-kinase inhibitorを加えることによって、初代培養血管内皮細胞の増殖能が向上する一方で、CD31抗原陰性の線維芽細胞や間葉系細胞などの増殖能が減少するため、初代培養確立過程で血管内皮細胞の単離を行うのに有用であることを明らかにした。加えて、Tube formation assay、および代表的なマーカー(vWF, ET1, VE-cadherin)のmRNA発現を解析することによって Rho-kinase inhibitor含有培地で確立された細胞が、機能的に血管内皮細胞としての表現型を有していることを確認した。 本手法を用いることによって、従来より機能的解析が行われると考えられるP4~P6継代の段階で、実数にして100倍程度の血管内皮細胞を確保することが可能となった。今後は、症例、サンプルの蓄積を重ね、免疫不全動物に対する移植実験など、従来はサンプル準備が困難で行うことのできなかった解析を進めていく。
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