小児救急の日常臨床において、「急性脳症(インフルエンザ脳症を含む)」と「熱性痙攣(複雑型)」を受診直後に鑑別することはむずかしい。 本研究では、患児から来院直後に採取した髄液を質量スペクトル(MS)計測し、パターン認識によるデータ解析を行うと、両疾患を鑑別することが可能か、を検討した。 2003-2008 年に発熱を伴う痙攣症状で救急外来を受診し、入院加療が必要と判断された患児から、入院直後に採取した髄液検体のなかから、「急性脳症」「熱性痙攣(複雑型)」と後日確定診断された患児の検体を選択し、「MS計測し、パターン認識によるデータ解析」を行うと、これらの疾患を鑑別できるかどうかを検討した。 MS計測データは、ProteinChip SELDI System(バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社)、Qチップ(strong anion exchange surface)をにて取得、ProteinChip Data Manager software version 3.0 (Bio-Rad).のExport Raw SpectraのプログラムによりCSVファイルにて抽出したものを使用した。 解析は、プロテオミクス用に加工した髄液MSデータセットおよび髄液MS全計測値(raw データ)より作成したMSデータセットを用いたパターン認識による解析を行った。 本研究では、Unscrambler X ver10.2(CAMO)を用いて、主成分分析によるデータの可視化、PLS(Partial Least Squares)判別分析法で解析し、クロスバリデーションによる検証を行った。解析の結果、「急性脳症」のデータ群と「複雑熱性けいれん」のデータ群とに明確に分離できることが確認された。
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