研究課題/領域番号 |
25670761
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
鍬方 安行 関西医科大学, 医学部, 教授 (50273678)
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研究分担者 |
早川 航一 関西医科大学, 医学部, 助教 (60403086)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 組織応力 / 組織血流 |
研究実績の概要 |
重症急性期症例の新しい循環管理法を開発するため、H25年度に新しく開発したプラットフォームを用いて、関心臓器の組織応力/血管内圧/組織血流量のモニタリングを実施した。1 動物のreductionを目的としてファントムによる実験系の精度確認を行った。平均動脈圧70~80 mmHg、毛細血管入り口圧30~35 mmHg、毛細血管圧20 mmHg、毛細血管出口圧15 mmHgとし、中空弾性管をゼラチンで包埋した。ペリスタポンプで疑似血液を駆動し、圧較差は自在クランプで形成した。組織圧(ゼラチン外部を圧する力)を変化させて応力、血管内圧測定精度を検証した。その結果、血管内圧の測定精度は±1 mmHg、ゼラチン応力の測定精度は±0.1 mmHgであった。2 動物(ウサギ)を用いて、前年に報告した通り空腸を関心臓器とした虚血再灌流モデルを作成し、再灌流後の組織血流をMoor LDIで、空腸組織応力をFISO細径マノメータによる連続モニタリングで観測した(n = 3)。30分のクランプで8cm長の選択腸管の中央部約2cmは完全虚血となり、再灌流15分後以内の過灌流をへて60分後前値より約30%(pixel unit)組織血流が低下した。空腸壁応力は、再灌流直後にわずかに陰転し、その後前値に復したのち、組織血流低下時(120分)には平均約1.1 mmHg上昇した。輸液(生理食塩水)量10ml/kg/hr増加の効果をみるパイロットスタディを実施したが(n = 1)、再灌流120分の壁応力増加は1.3 mmHgであった。3 本研究の前段階として実施した血管拡張物質の外的投与が個体および腸管酸素代謝に与える影響に関する論文を発表した。 H27年度は、病的条件下において応力変化と組織血流、酸素代謝の関連を明らかにし、血管透過性亢進にともなう臓器・組織浮腫形成を生じる場合の輸液適正化の指標を提示する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題を提出したのち関西医科大学への赴任がきまったため、H25年度の実験室整備に時間を要し、実プロトコル運用がH26年度からとなった。本年度は実験動物数のreducutionを目的として、実験系精度の検証を優先したため、動物実験総数が予定を下回り、ovu albumin投与群は未実施である。実験系はすでに完成しているので、当初の目的を達成する実験はH27年度に完遂可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的通り、臓器・組織壁応力の局所血流・酸素化への影響を明らかにする。H26年度中に実施した対照群(n=3)に7個体を加える。実験群では、組織虚血・再灌流による血管透過性亢進を助長する因子(ovu albuminまたはLPSを想定)を加え、顕著な壁応力増加時の局所血流・酸素化の変化を観察し、組織血流分配/酸素化に障害をおよぼす組織応力のcritical valueを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主任研究者が補助金申請を行った大阪大学からH25年2月に関西医科大学に赴任したため、H25年度はほぼ実験室の移設・準備に費やすことになり、動物を用いた実験開始がH26年度からになった。H26年度には実験精度の確認をファントムで実施したのち、空腸虚血再灌流による実験群および対照群での動物実験を当初計画に従って順調に遂行したが、当初計画でH26年度中に実施する予定であった虚血再灌流にともなう浮腫形成を増長する群の実施には至らなかったため、使用するはずであった動物・試薬などの予算を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に実施する上記実験群にわりあてる動物(一羽 23,000円+飼育費)、試薬などの予算に使用する。
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