研究課題
敗血症では、しばしば心筋障害を併発する。敗血症患者の血中には何らかの心筋抑制因子が含まれていると考えられているが、その全貌はわかっていない。本研究課題では、「敗血症における致死性メディエーターとして近年注目を集めている細胞外ヒストンが、敗血症患者の血中に含まれている心筋抑制因子であり、細胞外ヒストンの心筋傷害性によって心臓の収縮能が低下する」、という仮説について、臨床検体、動物実験、培養細胞を用いて検証した。まず、臨床検体中の血漿ヒストン濃度を測定したところ、健常人ではほぼゼロだったのに対し、敗血症患者では有意に高値を示していた。特に、死亡例において、高い傾向を示した。また、敗血症以外でも、外傷や腫瘍崩壊症候群などによって非感染性に細胞が傷害される病態においても、血漿ヒストン濃度の上昇を認めた。マウスにヒストンを投与すると、心電図にてST低下、R波の減高の所見を認め、心エコーでは右室の拡張、左室収縮能の低下を認めた。血液生化学検査では、CK、AST、LDHの上昇を認め、心筋などの細胞が傷害されていると考えられた。また、培養細胞を用いた実験でも、ヒストンによって細胞が傷害され、アポトーシスおよびネクローシスに陥る様子が観察された。播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬として現在広く使われている遺伝子組換え型トロンボモジュリン製剤はヒストンと結合してヒストンの毒性を中和し、ヒストンを投与したマウスの心筋傷害を軽減し、生存率を改善した。以上のことから、敗血症の際に血中濃度が上昇する細胞外ヒストンは、心筋傷害因子として働く可能性が示唆され、また、遺伝子組換え型トロンボモジュリン製剤によってそれを軽減しうる可能性が示唆された。
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