研究課題
マウスを用いたPACAPによる虚血細胞死抑制と神経再生・新生実験について研究を行った。脳虚血した正常のマウスとPACAP遺伝子欠損マウスにTSG-6を脳室内投与して細胞死抑制が起きるかどうかを形態学的に海馬領域をしらべた。その結果、PACAPはTSG-6に依存せず細胞死を抑制することを示唆する実験結果がえられた。もともとTSG-6は間葉系骨髄幹細胞から分泌されるタンパクであり、しかも生理作用として遅発性神経細胞死を抑制することがわかっていたために、PACAPの関与を考えたのであるが、どうも両者は別々の系で作用しているのではないかという結果をえた。したがってTSG-6を投与して脳内の遺伝子の動きをしらべてみたが特に顕著な遺伝子の亢進や低下がみられなかった。これは実験条件によってこのような結果がでたのであり、条件をかえてみると変化がでる可能性も考えられる。今後の研究課題であると思われる。さらにPACAPによる神経細胞死抑制機構をしらべるために、脳虚血あるいは脊髄損傷モデル動物をマウスで作成し、DNAアレイ解析を行った。その結果、PACAPは軸索伸張因子であるCRMP2という遺伝子あるいは遺伝子産物を活性化することが分かった。さらに脊髄損傷モデル動物を用いて胸髄レベルでカミソリで離断した個体にPACAPを直接患部に投与して観察したところ、軸索伸張が2週間くらいでおきることが分かった。またそのときにCRMP2の遺伝子が活性化することも明らかになった。またPACAP遺伝子欠損マウスでのCRMP2発現は低下しており、PACAPを投与することによってCRMP2の発現亢進することも分かった。以上の実験結果から、PACAPによる神経細胞の軸索伸張についての分子機構が明らかになり、げっ歯類のみならず霊長類でも同様の作用機序が存在する可能性が考えられ将来の神経再生・新生の作用機序解明にもつながると考えられる。
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