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2013 年度 実施状況報告書

救急応需の基幹的問題の解明に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 25670771
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関近畿大学

研究代表者

平出 敦  近畿大学, 医学部, 教授 (20199037)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード救急 / 応需 / 救急活動記録 / 搬送時間
研究概要

大阪市消防局の救急搬送記録のデータを用いて、当初の計画通り急性薬物中毒患者に関する救急搬送の実態に関して、論文化してJournal of Emergency Medicineに投稿することができた。救急応需の基幹的問題を解明するためには、医療機関が受け入れにくい病態のみではなく、より救命に直結した病態に関しても検討を進める必要がある。心血管イベントに関して、心停止に至っていない心筋梗塞のケースと、心原性の心停止に至ったケースに関して検討を行った。その結果、心筋梗塞に関しては、救急コールから病院到着まで2000年には23.0±8.8分であったのが、2007年には25.8±8.7分まで、年々、増加しており、そのトレンドは明らかであった(P<0.001)。その原因として、救急隊から病院への照会回数が2回以上要したケースが、2000年には11.8%と限られていたのに対して、2007年には25.3%にも増加しており、こうしたケースの実数も明らかに増加していた(P<0.001)。実は、病院外心停止では、その傾向は、これほど極端ではないものの、やはり2000年には25.3±7.3分であったのが、2007年には27.6±7.8分まで、搬送時間は延長しており(P=0.022)、2回以上照会を行ったケースの数も2000年には25%であった割合が、2007年には38.4%にも増加しており(P<0.001)、救命に直結している症例でも事態は深刻であることが明らかとなった。救急コールから患者のもとに到着するまでの時間およそ7分から8分であるが、患者のもとから、病院へ向けて出発するまでの時間が、時間因子として変動が大きいことが明らかであり、電話による医療機関への照会と受け入れ承諾を得るまでの時間が問題であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

大阪市の救急活動記録をもとに、救急応需の実態に関して検討を行ったところ計画どおり大阪市消防局の救急活動記録から、医療機関照会回数が多く、搬送に時間を要するケースを検証できた。特に、当初の計画では、救急医療機関で応需しづらい薬物中毒に関して、その趣旨と研究の意義を詳細に記載したが、その範囲に関しては、Journal of Emergency Medicineに投稿することができた。その結果、さらに研究範囲を広げて、救命に関してさらに重要な心血管イベントに関しても焦点をしぼった研究を進めることができた。その内容は、Acute Medicine & Surgeryにすでに掲載されてインターネットで公開されている。したがって、当初の計画以上に進展している。ただし、当初の計画に沿った薬物中毒に関する検討結果も論文として公開することが、必要である。

今後の研究の推進方策

上記のように、心血管イベントのような緊急性の高い病態に関してまで、救急患者の不応需の問題が影響を与えており、door-to-baloonの時間を短縮しようという世界的な掛け声とは裏腹に、事態は、少なくとも大阪市内においては、逆行して悪化しているということが提示された。当初の研究計画では、医療機関が引き取りにくい薬物中毒に関して検討を進めることを記載していたが、その問題に関して、本年度に成果がまとまってきたので、今後の推進方策としては、まず、論文化してpublishすることを目標をする。そのうえで、解決策の糸口になる知見を検証することを研究の推進方策とする。この基幹的な問題に関しては、あくまで医療機関のマンパワーの問題が大きな因子であることは間違いないが、総合的な見地から検討を進めるべきテーマである。救急隊の質の問題、プレホスピタルのマンパワーの問題なども関連する課題であり、検討を行う必要がある。この点に関しても今後の研究の推進方策としてすすめていく。最近、スマートフォンなどのツールを使って、病態と受け入れ医療機関をマッチングさせる方式が各地で導入されつつあるが、その基幹データを活用して、さらにこの問題に取り組んでいく道筋を作ることもきわめて重要な研究の方向性である。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画では、救急応需の基幹的問題に関して、海外の事情を参考にするために、外国旅費を計上していた。しかし、平成25年10月22日の、救急と疫学研究の談話会では、日本救急医学会のために来日されていたハーバード大学の長谷川耕平氏と詳細な情報交換ができ、救急応需の問題に関して、米国の事情を十分に把握することができた。その内容は、日本人の医師として、日本の事情と比較検討しながら、海外事情をとらえておられたこと、席上、厚生労働省からの行政の立場から参画いただき、充実した議論ができたこと、などから、非常に実質があがったものと考えられた。このため、平成25年度に関しては、海外の状況を参考にするための外国旅費を使用せず、次年度に繰り越した方が研究の実質があがるものと考えた。
平成25年度に開催した救急と疫学研究の談話会による情報交換は、非常に、実のあがったものであったことから、その基盤情報をもとに、繰り越した外国旅費を使用して、実質のある海外との情報交換を行う使用計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Amburance calls and prehospital transportation time of emergency patients with cardiovascular events in Osaka City.2014

    • 著者名/発表者名
      Kitamura T, Iwami T, Kawamura T, Nishiyama C, Sakai T, Tanigawa K, Sasaki M, Kajino K, Irusawa T, Hayashida S, Nishiuchi T, Hiraide A.
    • 雑誌名

      Acute medicine & Surgery

      巻: 5 MAR ページ: 1-10

    • DOI

      10.1002/ams2.25

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An association between systolic blood pressure and stroke among patients with impaired consciousness in out-of-hospital emergency settings.2013

    • 著者名/発表者名
      Irisawa T., Iwami T., Kitamura T., Nishiyama C., Sakai T., Tanigawa-Sugihara K., Hayashida S., Nishiuchi T., Shiozaki T., Tasaki O., Kawamura T., Hiraide A., Shimazu T.
    • 雑誌名

      BMC Emerg Med

      巻: 13 ページ: 24

    • DOI

      10.1186/1471-227X-13-24.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regional Variation in Survival Following Pediatric Out-of-Hospital Cardiac Arrest.2013

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Y., Iwami T., Kitamura T., Nitta M., Hiraide A., Morishima T., Kawamura T.
    • 雑誌名

      Circ J

      巻: 77 ページ: 2596-603

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Association of prehospital advanced airway management with neurologic outcome and survival in patients with out-of-hospital cardiac arrest.2013

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa K., Hiraide A., Chang Y., Brown D. F.
    • 雑誌名

      JAMA

      巻: 309 ページ: 1889-90

    • DOI

      10.1001/jama.2013.3107

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regional variability in survival outcomes of out-of-hospital cardiac arrest: The All-Japan Utstein Registry.2013

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa K., Tsugawa Y., Camargo C. A., Jr., Hiraide A., Brown D. F.
    • 雑誌名

      Resuscitation

      巻: 84 ページ: 1099-107

    • DOI

      10.1016/j.resuscitation.1013.03.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Current termination of resuscitation (TOR) guidelines predict neurologically favorable outcome in Japan.2013

    • 著者名/発表者名
      Kajino K., Kitamura T., Iwami T., Daya M., Ong M. E., Hiraide A., Shimazu T., Kishi M., Yamayoshi S.
    • 雑誌名

      Resuscitation

      巻: 84 ページ: 54-9

    • DOI

      10.1016/j.resuscitation.2012.05.027

    • 査読あり
  • [学会発表] 病院外心停止の良好転帰に寄与する因子の検討 ウツタイン大阪プロジェクトより2013

    • 著者名/発表者名
      林 靖之, 西内 辰也, 石見 拓, 酒井 智彦, 平出 敦, 新田 雅彦, 北村 哲久, 甲斐 達朗
    • 学会等名
      第41回日本救急医学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20131021-20131023
  • [学会発表] 高齢者搬送増加が及ぼす成人の搬送時間延長2013

    • 著者名/発表者名
      森田 正則, 蛯原 健, 天野 浩司, 加藤 文崇, 中田 康城, 横田 順一朗, 平出 敦
    • 学会等名
      第41回日本救急医学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20131021-20131023
  • [学会発表] 院外心停止/蘇生後症候群の研究の最前線 院外心停止患者における気道管理のcomparative effectivenessに関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      長谷川 耕平, Brown David, 平出 敦
    • 学会等名
      第41回日本救急医学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20131021-20131023
  • [学会発表] 外傷による病院外心停止症例の検討 ウツタイン大阪プロジェクトより2013

    • 著者名/発表者名
      林 靖之, 西内 辰也, 酒井 智彦, 平出 敦, 甲斐 達朗
    • 学会等名
      第27回日本外傷学会総会・学術集会
    • 発表場所
      久留米市
    • 年月日
      20130523-20130524
  • [学会発表] わが国における外傷センターの要件とは? 人口密集地でのプレホスピタルの現状と外傷センター設立による期待2013

    • 著者名/発表者名
      森田 正則, 中江 晴彦, 平出 敦
    • 学会等名
      第27回日本外傷学会総会・学術集会
    • 発表場所
      久留米市
    • 年月日
      20130523-20130524

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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