救急応需の基幹的問題に関して大阪市消防局のデータをもとに検討した。その成果は、すでにAcute Care & Surgeryの英文のジャーナルに、Characteristics and trends of emergency patients with drug overdose in Osakaのタイトルで掲載された。この論文では、救急応需の基幹的問題として、特に、救急隊から救急医療機関への照会回数が多く、搬送と受け入れに困難を生じている薬物の過量服用患者に焦点をあてて、分析をおこない、その件数が、一貫して増加していることを報告した。また、その患者背景と特徴に関して検討をおこなった。特に、1件あたりの搬送時間が長いことは、救急システムにおける負担として深刻であることを指摘できた。ところが、研究が計画以上に進展した結果、さらに最近にいたるデータ解析も行うことができ、状況の変化を明確にすることができた。過量服用の患者は、1998年には、年間1136人であったのが、2009年には1985人まで達した。しかし、2013年には1459人まで減少した。一方、薬物過量以外の患者では、1998年には134098人であったのに対して、2013年には174448人まで一貫して増加した。従って、救急患者の増加自体は、一貫して継続しているものの、薬物過量患者数については、このトレンドとは解離してピークアウトしている可能性が示唆された。搬送時間に変化があったかどうかなどの特徴は、さらに解析する必要がある。また、その原因の検討も、今後の課題であるが、背景として、向精神病薬の多剤投与抑制の動きが関連している可能性が示唆された。
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