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2013 年度 実施状況報告書

Genome Editing法を応用した遺伝子破壊導入による細菌感染制御法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25670775
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

中川 一路  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70294113)

研究分担者 丸山 史人  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30423122)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードゲノム編集 / TALEN / Cas9 / A群レンサ球菌 / ファージ / 感染制御
研究概要

本研究では、近年注目されているゲノム編集(Genome Editing)法と、細菌の持つバクテリオファージに対する獲得免疫機構であるCRISPRのスペーサー配列情報に基づいて、特定の菌のみの遺伝子破壊を誘導できる人工ファージを創出するための技術を開発することを目的とした.そこで、本年度は、まずこれまで使われているゲノム編集法のTALENおよびCas9のシステムをA群レンサ球菌の遺伝子破壊に用いることができるのか否かについて検討を加えた.A群レンサ球菌の染色体上の病原性遺伝子をターゲットとし、それぞれTALENでの標的部位、Cas9の標的部位をin silicoで決定し、発現プラスミドを構築した.その発現プラスミドおよび標的遺伝子を組み込んだプラスミドを大腸菌に導入し、それぞれのプラスミドのマーカーの耐性遺伝子を指標として遺伝子破壊効果を確認したところ、TALENでは充分な効果が認められなかったが、Cas9を組み込んだ系では、1つの遺伝子について設計した4つの標的部位に対して3つの部位で、組み込んだ標的遺伝子プラスミドを完全に破壊できることが明らかとなった.ついで、これらのCas9発現プラスミドをA群レンサ球菌特異的な発現誘導プラスミドに導入したところ、A群レンサ球菌においても同様に形質転換体の出現をほぼ完全に抑制することができたことから、Cas9を用いた遺伝子破壊系は、効率的に染色体破壊を誘導することが示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の目標としていた染色体遺伝子の破壊まで誘導することのできる認識配列を決定することができた.当初の目的としていたTALENを用いた遺伝子破壊系については、充分な効果を得ることはできなかった.これは、A群レンサ球菌の遺伝子配列のGC含量が平均38%と低く、特にチミンの連続配列が多いことからTALENの認識配列としては十分な認識配列となっていなかった可能性がある.一方、Cas9の系については、Cas9がもともとレンサ球菌属で保存されているシステムであり、PAM配列も明らかにされていることから比較的安定的な認識配列を選択できたことにより、効果的な遺伝子破壊誘導が起きたと考えられる.また、TALENの場合は、FokIなどの制限酵素認識配列が中心となり、その前後の配列が必要となるため、80-100塩基程度の認識配列が必要となるが、Cas9の場合はPAM配列を含めて30塩基程度で認識されるため、比較的設計の自由度も高く、1つの病原遺伝子についても1kb程度の遺伝子であれば複数の認識配列をターゲットとして用いることができるために効果的な配列を選択できたと考えられる.ただし、A群レンサ球菌については、従来、細菌の遺伝子誘導発現系として用いられているlactoseオペロンによる誘導については誘導がかからないため、Nicin誘導系を使う必要があるが、Nicin誘導系には別の制御因子を組み込む必要があるため、実用的ではない.今後はこの点を改善する必要があると考えている.

今後の研究の推進方策

平成25年度までに効果的な遺伝子破壊システムが機能することが示唆されたため、平成26年度は以下のように実験を進めていく.
1. Homologous recombinationを用いた遺伝子導入. レンサ球菌のゲノム上にあるプロファージ領域へCas9カセットの導入については、pSET4Sを用いたsingle cross over法によりファージの病原性カセット部位への導入を行う.また、レンサ球菌のファージの中には溶原化・環状化を繰り返し、エピソームとして振る舞うファージもあるため、このファージを狙う場合は、attPサイトを導入したCaspプラスミドを形質転換することにより、組み込ませる.
2. ドナー菌株からのファージの誘導と精製. 目的のプロファージ領域にCas9カセットを組み込ませたドナー菌株に、マイトマイシンあるいは紫外線刺激により、ファージを放出させる.この条件は、各ファージによって異なるが、過剰な刺激によっても放出が認められなくなるため、条件を十分に設定する.またファージ粒子の効果的な産生を誘導するため、宿主細胞との共培養系も導入する.
3. リコンビナントファージによるレシピエント株での変異導入と増殖抑制効果.本研究では、導入されたファージによる形質が、TALENのみでは分からないため、抗生物質耐性遺伝子(pSET4SにコードされているスペクチノマイシンあるいはpSET-Kmにコードされているカナマイシン耐性遺伝子)をマーカーにして、レシピエント株での導入効率、増殖抑制効果について解析を行う.

次年度の研究費の使用計画

当初予定していたTALENによる実験系では、作成するオリゴが長鎖になる予定であったが、Cas9による実験系が予想以上に効果があったため、実験系をCas9による実験系に変更したため、合成オリゴの費用が若干下がったためわずかな余剰が発生した.
平成26年度では、A群レンサ球菌のファージ領域への遺伝子破壊カセットの組み込みを行うが、プロファージ領域への組み込みには、本来2000塩基程度の末端領域にシングルクロスオーバーを用いて8000塩基以上の領域を組み込むことになる.そのため、その確認のために余剰のオリゴは必要となる.

  • 研究成果

    (29件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Streptococcus pyogenes Escapes from Autophagy2013

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa I
    • 雑誌名

      Cell Host and Microbe

      巻: 14 ページ: 604-606

    • DOI

      10.1016/j.chom.2013.11.012

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Endogenous Nitrated Nucleotide Is a Key Mediator of Autophagy and Innate Defense Against Bacteria2013

    • 著者名/発表者名
      Ito C, Saito Y, Nozawa T, Fujii S, Sawa T, Inoue H, Matsunaga T, Khan S, Akashi S, Hashimoto R, Aikawa C, Takahashi E, Sagara H, Komatsu M, Tanaka K, Akaike T, Nakagawa I, Arimoto H
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 52 ページ: 794-804

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2013.10.024

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analysis of the factors affecting the formation of the microbiome associated with chronic osteomyelitis of the jaw2013

    • 著者名/発表者名
      Goda A, Maruyama F, Michi Y, Nakagawa I, Harada K
    • 雑誌名

      Clin Microbiol Infect

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1111/1469-0691.12400

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CRISPR regulation of ittraspecies diversification by limiting IS transposition and intercellular recombination2013

    • 著者名/発表者名
      Watanabe T, Nozawa T, Aikawa C, Amano A, Maruyama F,Nakagawa I
    • 雑誌名

      GENOME BIOLOGY AND EVOLUTION

      巻: 5 ページ: 1099-1114

    • DOI

      10.1093/gbe/evt075

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genetic Analysis of Capsular Polysaccharide Synthesis Gene Clusters from All Serotypes of Streptococcus suis: Potential Mechanisms for the Generation of Capsular Variation2013

    • 著者名/発表者名
      Okura M, Takamatsu D, Maruyama F, Nozawa T, Nakagawa I, Osaki M, Sekizaki T, Gottschalk M, Kumagai Y, Hamada S.
    • 雑誌名

      Appl Environ Microbiol.

      巻: 79 ページ: 2796-2806

    • DOI

      10.1128/AEM.03742-12

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Complete Genome Sequence of Propionibacterium acnes Isolate from sarcoidosis patient.2013

    • 著者名/発表者名
      Minegishi K, Aikawa C, Furukawa A, Watanabe T, Nakano T, Ogura Y, Ohtubo Y,Kurokawa K, Hayashi T, Maruyama F, Nakagawa I, Eishi Y
    • 雑誌名

      Genome Announc

      巻: 1 ページ: e00016-12

    • DOI

      10.1128/genomeA.00016-12

    • 査読あり
  • [学会発表] 発現解析に基づいた選択的オートファジーに対抗するA群連鎖球菌遺伝子の同定2014

    • 著者名/発表者名
      相川知宏, Amonrattana Roobthaisong, 野澤孝志, 渡辺孝康, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] 複合細菌感染症に関わるキーストーン種と病原性因子ネットワーク2014

    • 著者名/発表者名
      郷田瑛, 加地博一, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] 細菌感染特異的オートファジーを制御する細胞制御因子の同定と機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      中島慎太郎, 今村拓郎, 相川知宏, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] Atg5-independent/Rab9a-dependent target of intracellular group A streptococcus2014

    • 著者名/発表者名
      野澤孝志, 野澤敦子, 相川知宏, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] Contribution of recycling endosome in Group A Streptococcus induced autophagosome formation2014

    • 著者名/発表者名
      Bijaya Haobam, 野澤孝志, 野澤敦子, 尾田誠一郎, 相川知宏, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] The Small GTPase Rab30 regulates anti-bacterial autophagy2014

    • 著者名/発表者名
      尾田誠一郎, 野澤孝志, 野澤敦子, 相川知宏, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] Rab35 and TBC1D10A regulate the recruitment of NDP52 to groupA Streptococcus for autophagy2014

    • 著者名/発表者名
      野澤敦子, 野澤孝志, Bijaya Haobam, 相川知宏, 丸山史人, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] インプラント周囲炎および歯周炎罹患部位の細菌群集比較を通じた周囲炎原因候補種と機能遺伝子の選定2014

    • 著者名/発表者名
      芝多佳彦,丸山史人, 竹内康雄,渡辺孝康, 小柳達郎, 和泉雄一, 中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] 歯周病原細菌におけるCRISPRのゲノム進化制御2014

    • 著者名/発表者名
      渡辺孝康,野澤孝志,相川知宏,丸山史人,中川一路
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] 歯周病原細菌におけるCRISPRのゲノム進化制御2014

    • 著者名/発表者名
      渡辺孝康,野澤孝志,相川知宏,丸山史人,中川一路&
    • 学会等名
      第8回日本ゲノム微生物学会
    • 発表場所
      東京(東京農業大学)
    • 年月日
      20140307-20140309
  • [学会発表] 細胞内寄生を介したA群連鎖球菌の多様化・進化機構の解明2014

    • 著者名/発表者名
      山田俊介,柴崎真樹,渡辺孝康,丸山史人,中川一路
    • 学会等名
      第8回日本ゲノム微生物学会
    • 発表場所
      東京(東京農業大学)
    • 年月日
      20140307-20140309
  • [学会発表] 種間の競争・協力がもたらす複合感染症成立機構2014

    • 著者名/発表者名
      丸山史人,遠藤亜希子,和泉雄一,中川一路
    • 学会等名
      第8回日本ゲノム微生物学会
    • 発表場所
      東京(東京農業大学)
    • 年月日
      20140307-20140309
  • [学会発表] インプラント周囲炎・歯周炎罹患部位で活性を有する細菌群集比較を通じた周囲炎原因候補種の選定2013

    • 著者名/発表者名
      芝多佳彦,竹内康雄,中川一路, 和泉雄一
    • 学会等名
      第78回国腔病学会学術大会
    • 発表場所
      東京(東京医科歯科大学)
    • 年月日
      20131206-20131207
  • [学会発表] 歯周病原細菌ゲノム情報から紐解く種の共生機構2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤亜希子,渡辺孝康,丸山史人,和泉雄一,中川一路
    • 学会等名
      第29回日本微生物生体学大会
    • 発表場所
      鹿児島(鹿児島大学郡元キャンパス)
    • 年月日
      20131122-20131125
  • [学会発表] CRISPRによる病原性細菌の生存と進化侵略2013

    • 著者名/発表者名
      中川一路
    • 学会等名
      第55回歯科基礎医学会学術大会・総会
    • 発表場所
      岡山(岡山コンベンションセンター)
    • 年月日
      20130920-20130922
    • 招待講演
  • [学会発表] Porphyromonas gingivalisにおける遺伝的組換えとCRISPRによる相反的な種内多様性制御2013

    • 著者名/発表者名
      丸山史人,渡辺孝康,野澤孝志,中川一路
    • 学会等名
      第55回歯科基礎医学会学術大会・総会
    • 発表場所
      岡山(岡山コンベンションセンター)
    • 年月日
      20130920-20130922
  • [学会発表] Red-complex構成細菌間での異なる進化機構2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤亜希子,渡辺孝志,丸山史人,和泉雄一,中川一路
    • 学会等名
      第55回歯科基礎医学会学術大会・総会
    • 発表場所
      岡山(岡山コンベンションセンター)
    • 年月日
      20130920-20130922
  • [学会発表] 多株ゲノム情報から見出された歯周病原細菌CRISPRの新機能2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺孝康,野澤孝志,相川知宏,遠藤亜希子,丸山史人,中川一路
    • 学会等名
      第7回日本ゲノム微生物学会若手の会
    • 発表場所
      静岡(ろうきん研修所富士センター)
    • 年月日
      20130919-20130920
  • [学会発表] 遺伝的組換えとCRISPRによる相反的な細菌種内多様性制御2013

    • 著者名/発表者名
      丸山史人,渡辺孝康,野澤孝志,相川知宏,中川一路
    • 学会等名
      NGS現場の会 第三回研究会
    • 発表場所
      神戸(神戸ポートピアホテル)
    • 年月日
      20130904-20130905
  • [学会発表] 顎骨骨髄炎の細菌創を規定する因子とコア・マイクロバイオーム2013

    • 著者名/発表者名
      郷田瑛,丸山史人,道泰之,加地博一,中川一路,原田清
    • 学会等名
      第7回細菌学若手コロッセウム
    • 発表場所
      広島(フォレストヒルズガーデン/広島エアポートホテル)
    • 年月日
      20130807-20130809
  • [学会発表] 比較ゲノム解析から見出されたTannerella forsythia特異的生存戦略2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤亜希子、渡辺孝康、荒川真一、丸山史人、中川一路、和泉雄一
    • 学会等名
      第56回日本歯周病学会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20130531-20130601
  • [学会発表] インプラント周囲炎と歯周炎で構成種と共起・排除関係が異なる2013

    • 著者名/発表者名
      丸山緑子、竹内康雄、丸山史人、中川一路、和泉雄一
    • 学会等名
      第56回日本歯周病学会
    • 発表場所
      東京(タワーホール船堀)
    • 年月日
      20130531-20130601
  • [備考] 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・細菌感染制御学分野

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/grad/bac/

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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