平成26年度は、G1期に活性化する脱リン酸化酵素の阻害剤を用いて、網羅的にGemininのThr25を脱リン酸化するフォスファターゼを調べるために、種々の脱リン酸化酵素の阻害剤を処理し、G1期におけるGemininの発現誘導を指標にスクリーニングした。しかしながら、GemininのThr25を脱リン酸化するフォスファターゼを同定するに至らなかった。将来的に、siRNAライブラリーやもっと多種の阻害剤を用いた解析を行うべきであると考えられた。次に、Geminin T25D(Thr25をAspに変えたリン酸化模倣型変異体)を安定性に発現する癌細胞株を作成した。GemininをsiRNAを用いてknockdownさせると、DNA複製を終えることができずに、染色体数が増加し、核の腫大とS/G2期での細胞増殖停止がおこるため、内在性のGemininの発現をなくすために、コンディショナルノックアウト(CKO)マウスから採取された胎児線維芽細胞を用い、Creリコンビナーゼを発現させることで、内在性のGemininを欠損させることを試みた。Geminin CKOマウスから採取した胎児線維芽細胞にGeminin T25Dを安定性に発現させ、Creリコンビナーゼを発現させることにより、内在性のGemininを欠損させたGeminin過剰発現モデルを作成した。しかしながら、時間的な制約で、その後の解析には至らなかった。今後、その細胞を用いて、細胞分裂動態異常をタイムラプス蛍光顕微鏡を用いて経時的に観察するとともに、細胞周期調節への影響をフローサイトメトリーや細胞周期マーカーの発現を調べることにより詳細に検討する予定である。さらに、これら細胞のコロニー形成能を検討し、癌化への影響を検討する予定である。また、Gemininの過剰発現とリン酸化異常による過剰発現との関連を明らかにするため、種々の癌から採取された組織から、タンパクを抽出し、Gemininの発現とThr25のリン酸化動態をWestern blot法により検討した。その結果、Gemininの発現とリン酸化に関連性がみられた。
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