研究課題/領域番号 |
25670782
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
今井 元 昭和大学, 医学部, 講師 (90291343)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 摂食活動 / 生殖活動 / LHRH ニューロン / 起源 / 鼻プラコード / Gli3K.O.マウス / 鼻球 / LHβ産生細胞 |
研究概要 |
摂食活動は、生殖活動と連動しており、発生学的にも生殖を制御するLHRH ニューロンは、顎顔面原基(鼻板)から視床原基(間脳)に移動して、摂食中枢の神経核群とネットワークを形成する。しかしながら、その発生機構やネットワーク形成については解明されていない。研究代表者等は、哺乳類の顎顔面や視床下部の分化には、頭部中軸中内胚葉の誘導作用(Shh)が必須であることを明らかにしてきた。したがって、『鼻板から間脳に移動するLHRH ニューロンの発生過程おいても頭部中軸中内胚葉の誘導作用が必須である(仮説)』可能性が高い。そこで、『中軸中内胚葉のShh シグナルが、どのようにLHRH ニューロンの起源・決定・移動・分化に関わるのか?』を明らかにするために、本年度は、鼻球を欠損するGli3K.O.マウスを用い、以下の2点について免疫組織学的に検討した。 1)未だに論争中のマウスのLHRH -ニューロンの前駆体が鼻板のみに由来するのかどうか。 2)ganadotropesの出現がGnRH-ニューロンの移動に依存しているのかどうか。 抗LHRH抗体と抗LHβ抗体による免疫組織化学をE17.5のGli3-/-K.O.マウスに適用した。 Gli3-/-マウスのGnRH産生細胞(免疫反応性細胞)は、鼻板と鋤鼻器のみに観察され、対照実験のWTマウスで観察された脳への侵入・移動部位(前脳前端やアンモン角)や到達部位(室傍核, 弓状核, 内側視索前野)では決して観察されなかった。これらの結果は、LHRHニューロンの前駆体は鼻プラコードのみに由来するという仮説を強く示唆している。また、K.O.マウスでは、LHRH産生細胞が脳内に認められなかったにも関わらず、LHβ産生細胞は腺下垂体に出現した。この事は、胎生期のganadotropesの出現は、GnRHニューロンの間脳への移動とは独立して進行することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね進行しているが、26年度から新しい研究施設に異動となり、25年度の予定を一部変更し, 27年度に行う予定であったGli3(-/-)K.O.マウスの解析を先に行うこととした。 そのため25年度に行う予定であった長期全胚培養系の確立は26年度に行うことにした。新しい施設での培養系のセットアップには、それなりに費用は必要であると考えられるため、25年度の補助金を26年の補助金に使用することとした。
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今後の研究の推進方策 |
『26年度』25年度の研究においてGli3-/-マウスのGnRH産生細胞は、鼻板と鋤鼻器のみに観察され、対照実験のWTマウスで観察された脳への侵入・移動部位(前脳前端やアンモン角)や到達部位(室傍核, 弓状核, 内側視索前野)では決して観察されなかった。これらの結果は、LHRHニューロンの前駆体は鼻プラコードのみに由来するという仮説を強く示唆している。しかしながら、K.O.マウスの結果であるため、他から生じるLHRHを完全に否定することはできない。そこで、LHRH ニューロン発生の場の決定~分化を再現する培養系の確立し、起源を解明する。 ①胎齢9.5 日(E9.5) のラット胚の側方ANR を蛍光色素(DiI:赤)用いて標識・可視化し、次に、②72 時間の全胚培養(WEC)を行い、DiI 陽性細胞(側方ANR)が鼻板へ寄与することを確かめる。③WEC (120~144 時間)後、DiI 陽性の側方ANR がLHRH/SRIF 産生細胞の移動経路(鼻球・終脳と間脳の境界・第三脳室前壁・対角帯野・視索前核・弓状核)に移動することを確認する。④WEC 終了後、半側頭顔面を切り出し、ミリポアフィルター上に乗せ、器官培養用ディッシュ中のステンレス格子の上に移し、器官培養を開始する。また、試料の一部は、免疫染色(蛍 光:Alxa488(緑))を行い、DiI 陽性細胞が、SRIF/LHRH 産生細胞に分化することを確認する。⑤器官培養(3~6 日)後、さらに、免疫染色を行い、側方ANR 由来のDiI 陽性細胞が室傍領や視索前野から弓状核・正中隆起に軸索を伸ばすSRIF/LHRH ニューロンに分化することを確かめる。⑥対照実験として、ラトケ嚢(下垂体プラコード)や神経堤を標識し、同様に③④⑤の操作を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度から新しい研究機関に異動することになり、研究計画の変更を余儀なくされた。なぜなら、この研究課題の目的は培養系の確立とそれを用いた解析であり、そのため培養条件を変えずに一連の研究を進行する必要があるからである。また、新しい施設での培養系のセットアップには、26年度の予算以上の費用が必要であり、25年度に配分になった費用は全て必要になると考えられる。そのため、25年度の実験計画を変更し、27年度に行う予定であったGli3(-/-)K.O.マウスの解析を先に行うこととした。この研究は、既に実験材料や組織が整っているため、最小限の研究費で研究を進められたため、25年度に配分になった補助金を26年度に使用することとした。 平成26年度:新しい施設での培養法の確立の初年度なので以下の実験を遂行するが必要である。『E9.5 からの10 匹x2(実験群と対照群)を3回繰り返すと60 匹:60 匹×1.4 万=84 万円(血清)』『E12.5 からの10 匹x2(実験群と対照群)を3回繰り返すと60 匹:60 匹×1 万=60 万円(血清)』『毋獣12 匹:0.7x12=8.4 万,培養培地:培養試薬 =10 万』『混合ガス:4 種類 (5%酸素,20%酸素,60%酸素,90%酸素)=20 万』『免染試薬:13 万,プラスチック・ガラス器具:25 万円』『培養用マウス血清=1.8万』『培養メディウム=0.6x2=1.2万』 『水(組織培養用水+insituハイブリダイゼーション用+免疫染色用水)=0.3万x22L=6.6万』 計230.万
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