『マウス胚におけるGnRH-ニューロンの移動に非依存的な性腺刺激ホルモン分泌細胞の出現』: まず、Gli3のK.O.マウス(-/-)の視床下部 及び 下垂体におけるGnRHニューロンとLHβ産生細胞の分布を解析した。その結果、GnRHニューロンは、嗅神経の周囲では検出できたが、前脳前端から脳内に侵入する細胞 及び 視床下部基底部に移動する細胞は検出できなかった。さらに、正中隆起の近傍において、抗GnRH抗体に対する免疫陽性の細胞は検出できなかった。また、第三脳室前壁でGnRHニューロンの正中隆起でのGnRH分泌が観察されないにも関わらず、腺性下垂体にLHβ産生細胞が出現した。これらの結果は、『GnRHニューロンが鼻上皮から嗅神経に沿って前脳に侵入しなかった場合には、GnRHニューロンは視床下部に出現しないことを示しており、哺乳類のGnRHニューロンが鼻板のみに由来すること、LHβなどの腺性下垂体のホルモン産生細胞の発生は、GnRH-ニューロンの移動に非依存的な分化することを示唆していた。 『GnRHニューロンの発生と移動の場の形成に対するAME 及びShh の発生制御機構を解明する』: まず、胎齢9.5 日のラット胚を用いて、AMEの除去実験・Shhの中和抗体(5E1)による生体抗体染色・阻害実験を行い、 6~72時間の全胚培養を行った。その結果、AME は、鼻上皮におけるFgf8 やBmp2などの下流の遺伝子発現に重要であること。さらに、Shhの中和抗体(5E1)は、全胚培養下でAMEに接着し、鼻上皮の神経発生に関わる転写因子(Nkx2.1)の発現に関与すること。Gli3 K.O.マウスの解析においても、GnRH ニューロンは間脳の視索前野への移動が阻害されていたが、鼻上皮由来の鋤鼻器で分化していた。したがって、AMEは、Shh→ Gli3のカスケードを介してGnRH-ニューロンの移動の場の形成に関与していることが明らかになった。
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