研究課題/領域番号 |
25670784
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
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研究分担者 |
荒木 良子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 室長 (40392211)
中島 和久 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (90252692)
出野 尚 鶴見大学, 歯学部, 実習指導教員 (40435699)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分化転換 / 転写活性 / MyoD |
研究概要 |
分化転換モデルとしては Osx-cre-GFP miceを用いた。これはthe osterix (Sp7) promoterの直下にtTA tetracycline transactivatorがあり、その直下にtetracycline responsive element (TRE; tetO)-controlled GFP/Cre fusion protein が存在する。tetracycline analog doxycycline の非存在下では、Osx1が発現している細胞でオンになっており、GFPもプラスになる。そこでOsx陰性細胞が、陽性細胞になった状態を骨芽細胞形質を獲得したとの指標とできる可能性があるため、予備的検討としてOsx-cre-GFP mice由来の皮膚線維芽細胞を培養し、GFPの状態とOsxの発現状態を調べた。定常状態ではほとんどGFPは発現していないが、BMP処理することにより、GFPが発現することを確認した。内在性の遺伝子発現を調べて見たところ、Osx、Id-1,ALP の遺伝子発現が上昇しており、分化誘導が非骨芽細胞においてもモニターできることを確認できた。次に骨軟骨分化に関与する重要な転写因子Osterix runx2 sox9 についてそれぞれTAD fusion タンパクを作成しその機能を解析した。MyoD-runx2 についてはrunx2 binding site を持つosteocalcin プロモーターのOG-2 Lucに対しての転写活性化能、 MyoD-sox9についてはtype II collagen promoter sox9 binding site を持つ coll2 sox9BD-Lucに対しての転写活性化能を指標とした。前者についてはMyoD fusionをつけたものが、付けないものに対して20倍以上転写活性化が見られた。後者についてはその差は10倍程度であるが、興味深いことに、2コピーのMyoD-TAD fusionと1コピーのものと比べると前者のほうが若干低く、至適な量が存在する可能性が示された。またMyoD-Osterixについては 10T1/2細胞に発現させたとき、コラーゲンI型遺伝子の発現はMyoD fusionをつけたものが、付けないものに対して10倍以上発現を促進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究においてmyoD-TAD-fusionを発現させることで有効に転写活性化能をあげるのは、2つの転写因子runx2 sox9で示された。Osterixについては転写活性化を測定する上でのターゲットとなる配列が不明確であるため、正確に転写活性化能を評価することは難しい。しかしながら内在性の遺伝子発現に及ぼす影響はコントロールに比べはるかに上昇させており、少なくとも転写因子としての機能は高まっていることが示された。またTADコピー数が高まればその効果が増加するものである、ということではなくむしろ至適な量(あるいは位置)がある事が示された。また分化転換モデルとしてのOsx-cre-GFP mice由来の皮膚線維芽細胞もosterixがオンになっている状態を評価できる、という点で一定のモデルとなり得ることが示された。この皮膚由来の細胞を効率よく骨芽細胞系譜へ分化させることができるか、が次年度への課題である。
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今後の研究の推進方策 |
myoD-TAD fusionの転写活性化メカニズムの解析 myoD-TAD fusionによって少なくとも骨格系に関わる重要な転写因子の3つとも機能が活性化されていることが前年度の結果から示唆された。そこで今年度はどのようなメカニズムによって転写活性化が起こるか、次のアプローチで明らかにする。1)TADのどこが特に重要であるか、調べるためにTAD deletion mutant を作成し、それぞれの活性化能を比較する。2)転写活性化に関わる候補としてHAT活性のある分子(p300など)が考えられる。そこでそれらのノックダウンをすることで活性化能にどのような影響があるか、調べる。3)2)で影響が得られた分子についてはTADドメインとの直接の作用があるか否かをIPによって調べる。4)fusionをリンカータイプのもの(たとえばglycin linker)に変えたときにその活性がどのように影響があるかを調べる。 myoD-TAD fusionの骨芽細胞系譜へ分化転換能の解析 前年度に引き続き皮膚由来の細胞を効率よく骨芽細胞系譜へ分化させる条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度には一時的な研究補助のための人件費を計上していたが、進行上また試薬の進歩により効率よく研究を行うことができる部分があり、必ずしもその研究補助は必要が無くなったが、一方でそのために高額な試薬を購入する必要が生じた(物品費)。そのため、予定より物品費がかかった。しかしながらトータルでは、次年度使用額が生じた。 高価な試薬を当初の想定より多く購入する必要があること、また輸入試薬であり、外国為替の影響で価格の値上げが予定されており、次年度には物品費が予定より多く必要であると思われる。したがってこの使用額を次年度の使用予定額に加えてトータルでの物品費増加に充当させる。
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