研究課題/領域番号 |
25670790
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西頭 英起 宮崎大学, 医学部, 教授 (00332627)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ストレス応答 |
研究概要 |
歯と骨の形成とその破綻による疾患のメカニズムを考える上で、骨基質など全ての分泌タンパク質が通過する小胞体(ER)の機能を理解することは不可避である。しかし、小胞体のみならず細胞内オルガネラが発信するシグナルに着目した硬組織研究は数少ない。本研究では、品質管理が保たれた「元気なERか?」機能不全に陥った「弱ったERか?」を可視化する新規の小胞体品質検出プローブ(ER quality control monitoring probe)を開発し、これまでにない視点での硬組織研究を目指す。技術的には、小胞体内(酸性)でも蛍光を発することが可能なGFP変異体を開発し、細胞・個体レベルに導入しその有用性を検証する。本研究成否は、プローブ開発に依存するが、様々な硬組織疾患マウスモデルに応用すればその波及効果は極めて大きいと期待される。 そこで、本研究では、申請者がこれまで進めてきた小胞体品質管理機構に関する研究基盤をもとに、これまでにない新たな小胞体機能のバイオマーカーを作出する。さらにin vivoで小胞体の機能をモニターできるマウスを作出し、硬組織細胞における小胞体の状態を経時的に観察することを試みる。これにより、これまでほとんど研究がなされていなかった歯と骨における小胞体の機能と役割を明らかにするための研究基盤を開発する。 平成25年度は下記の項目について検討した。 ・酸化条件下で蛍光を発するGFPCys(-)の作製、・小胞体内腔滞在型ER-GFPCys(-)の作製、・ER-GFPCys(-)の薬剤誘導性発現未分化骨芽細胞株の作製、・レンチウィルスによるER-GFPCys(-)の破骨細胞分化への導入、・Tet-ER-GFPCys(-)トランスジェニックマウスの作製
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の点について具体的な進捗を得たため。 GFPタンパク質は、細胞質内で図4の様なβバレル(樽型)構造をしており、このような高次構造を獲得することで450nm付近の吸収波長で励起され蛍光を発する。しかし、その一次アミノ酸配列内には一つの分子内ジスルフィド(S-S)結合が形成されるシステイン残基が存在する。しかし、小胞体内腔は比較的酸性状態にあるため、S-S結合が形成されず、そのため立体構造が崩れ蛍光が極めて減弱する。この問題点を解決するため、システインを他のアミノ酸に置換し、さらにS-S結合がない状態でもβバレル構造を維持できるよう、様々な部位にランダム変異を挿入し、酸性で蛍光を発する変異型GFP [GFPCys(-)]を作製した。 また、スクリーニングによって得られるGFPCys(-)を小胞体内腔に発現させ、かつERADを介して素早く分解されるタンパク質を下記の配列を付加することで作製した。 テトラサイクリン(Tet)投与によって目的タンパク質の発現on/offを制御できるシステムにより(図6)、骨芽細胞への分化誘導が可能なC2C12細胞、軟骨芽細胞への分化が可能な前駆軟骨細胞株ATDC5、間葉系幹細胞などを用いて、恒常的遺伝子導入細胞株を作製した。 ウィルス発現システムを用いて、Lentivirus-Tet-ER-GFPCys(-)を作製した。[TRE(Tet responsive element)]-[CMV promoter]-[ER-GFPCys(-)]コンストラクトのトランスジェニック(Tg)マウスの作製を外部委託により開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度進捗に基づき、下記の点を中心に研究を進める。 in virtoの実験系としては、骨芽細胞・破骨細胞分化におけるin cell発現系の解析を行う。 in vivoの実験系としては、Tet-ER-GFPCys(-) Tgマウスの作製を完了し解析する。
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