研究課題/領域番号 |
25670792
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20264252)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (10367617)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨リモデリング / Wnt / Sost |
研究概要 |
骨リモデリングは骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞および骨細胞の連携により行われる。Wntが共受容体Lrp5に結合するとb-カテニンシグナルが活性化され、骨形成が誘導される。一方、骨細胞から分泌されるSclerostin(Sost)は、b-カテニンシグナルを阻害し、骨形成を抑制する。OPG欠損マウス(OPG-KO)は骨吸収と骨形成活性が共に高い骨代謝回転を示す。OPG-KO マウスでは、Sostの発現が著しく低下することを見出している。この所見は、骨吸収に伴い増加する因子によりSostの発現が抑制されることを示唆する。平成25年度は以下の解析を行った。1. OPG-KO および野生型マウスに抗RANKL 抗体を投与すると破骨細胞の分化が抑制された。このときのSclerostinの発現を免疫組織化学的手法およびリアルタイムPCR法で解析した。その結果、OPG-KOで低下したSostの発現は、抗RANKL 抗体の投与によって増加した。2. 破骨細胞から分泌されSostの発現を低下させる因子を同定するためには、Sostを高発現する細胞を用いたアッセイ系の確立が必須である。ラットの骨肉種細胞株であるUMR106細胞と骨芽細胞株であるMC3T3E1細胞を培養し、Sost発現をタンパク質レベルで検出したところ、UMR106細胞が顕著にSostを産生することを見出した。3. 骨芽細胞と骨髄細胞を共存培養し、破骨細胞形成を誘導した。この培養上清をUMR106細胞の培養系に添加すると、Sost発現の低下が認められた。また、頭蓋冠由来骨芽細胞およびMC3T3E1の培養上清でも同様な結果が得られた。しかし、ST2細胞の培養上清は、Sostの発現を抑制しなかった。以上から、破骨細胞および骨芽細胞は、UMR106細胞のSost発現を抑制する因子を分泌する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OPG-KOマウスに抗RANKL抗体を投与すると、骨吸収が抑制され、骨組織でのSostの発現が上昇した。この現象は、免疫組織学的解析に加え、リアルタイムPCRを用いたトランスクリプトーム解析でも確認できた。Sostの発現を簡便にスクリーニングするアッセイ系では、UMR106細胞がSostを高発現することを確認している。Sostの発現を抑制することが報告されているPGE2をこの培養に添加すると、Sostの発現が抑制した。この結果から、Sost発現抑制因子を同定するためのバイオアッセイ系が確立できたと考える。このように、研究計画にそって概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実施計画に沿って、Sost発現抑制因子の同定を行う。1つは、培養上清中の抑制活性がタンパク質成分に由来するのか?あるいは、PGE2などの低分子によるものかを明らかにしたい。平成26年度の研究実施で計画しているクロマトグラフィーを行う。クロマトグラフィーでの部分精製がうまくいかない場合は、DNAチップを用いたトランスクリプトーム解析を行い標的因子の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
キャンペーンなどの割引により消耗品が当初の予定額より安く購入できたため、33,840円の次年度使用額が生じた。 平成26年度も細胞培養を行う計画にしており、培養用試薬を購入する予定である。
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