研究課題
骨リモデリングは骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞および骨細胞の連携により行われる。OPG欠損マウス(OPG-KO)は骨吸収と骨形成活性が共に高い骨代謝回転を示す。OPG-KO マウスでは、Wntシグナル抑制因子であるSostの発現が著しく低下することを見出している。この所見は、骨吸収に伴い増加する因子によりSostの発現が抑制されることを示唆する。平成26年度は以下の解析を行った。破骨細胞特異的Wnt5a コンディショナルノックアウト(cKO)マウスにおけるSclerostin 発現解析:(1) 破骨細胞特異的Wnt5a cKO マウスの解析: リアルタイムPCRを用いて、脛骨におけるsclerostinの発現を解析した。その結果、Wnt5a cKOでは、sclerostinの発現が増加した。この結果はWnt5aがsclerostinの発現を抑制する可能性を示した。(2) UMR106細胞を用いた解析:平成25年度の解析で、UMR106細胞がsclerostinを高発現することを見出した。そこで、UMR106細胞の培養にリコンビナントWnt5aを添加した。Wnt5aは、UMR106におけるsclerostinの発現に影響を及ぼさなかった。つまり、Wnt5aは、sclerostinの発現を抑制しないことを示している。(3) Sclerostinの発現抑制因子の発現:平成25年度の解析から、培養破骨細胞はUMR106細胞のsclerostinの発現を抑制する因子を分泌する可能性が考えられた。そこで、クロマトグラフィーを用いて破骨細胞の培養上清から抑制因子の精製を試みた。一定な溶出画分に抑制活性は認められるものの、精製度が低いため因子の同定には至っていない。
3: やや遅れている
破骨細胞特異的Wnt5a cKO マウスおよびリコンビナントWnt5aを用いた解析から、Wnt5aは、直接sclerostin産生細胞に作用し、その産生を抑制するわけではないことが明らかになった。Sclerostin阻害因子候補の中からWnt5aを除外できる結果だと思われる。クロマトグラフィーを用いて破骨細胞の培養上清から抑制因子の精製を試みた。この研究は、破骨細胞の培養上清を集めることが予想以上に困難であること、さらに部分精製が難しいため、因子の同定には至らなかった。この点で、研究計画に多少遅れが生じたと考えている。
平成26年度以降の研究実施計画に沿って、Sost発現抑制因子のさらなる同定を行う。クロマトグラフィーでの部分精製がうまくいかなかったため、DNAチップを用いたトランスクリプトーム解析を行い標的因子の同定を試みる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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