研究課題
骨リモデリングは骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞および骨細胞の連携により行われる。Wntが共受容体Lrp5に結合するとβ-カテニンシグナルが活性化され、骨形成が誘導される。一方、骨細胞から分泌されるSclerostin(Sost)は、β-カテニンシグナルを阻害し、骨形成を抑制する。OPG欠損マウス(OPG-KO)は骨吸収と骨形成活性が共に高い骨代謝回転を示す。OPG-KO マウスでは、Sostの発現が著しく低下することを見出している。この所見は、骨吸収に伴い増加する因子によりSostの発現が抑制されることを示唆する。平成27年度は以下の解析を行った。(1) 破骨細胞が分泌するsclerostin (Sost)発現抑制因子の解析:ラットの骨肉腫細胞であるUMR106 は、Sostを過剰発現する。破骨細胞の培養から調整した培養上清の存在下でUMR106を培養したところ、Sostの発現が抑制された。(2) Sost発現抑制因子の同定:破骨細胞が分泌するSost発現抑制因子を同定するため、破骨細胞の培養から精製したRNAをマイクロRNA解析に供した。分泌タンパク質に絞って解析したが、発現が高い遺伝子の中で、候補を絞りこめなかった。(3) 破骨細胞から分泌されるサイトカインX(X)の解析:マイクロRNA解析において、破骨細胞はXを発現することが明らかになった。さらに、ウェスタンブロット解析とリアルタイムPCR解析において、破骨細胞は、サイトカインX(X)を顕著に発現することを確認した。さらに、中和抗体を用いて、破骨細胞の培養上精のXを中和すると、Sost抑制効果が消失した。以上より、破骨細胞はXを分泌し、Sostの発現を抑制する。これにより、Wntシグナルを高め、骨形成を誘導することが示唆された。
すべて 2015
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Bonekey Rep.
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10.1038/bonekey.2015.82
Biochem Biophys Res Commun.
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