研究課題/領域番号 |
25670797
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
苔口 進 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10144776)
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研究分担者 |
前田 博史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00274001)
玉木 直文 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (20335615)
狩山 玲子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40112148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染症 / 歯学 / 細菌 / ゲノム / 抗生物質 |
研究概要 |
グラム陰性菌の割合が増加した歯周病の病的な歯肉縁下プラーク細菌叢からグラム陰性菌のみを特異的に減少・消滅させることができれば、歯周病治療の画期的な方策となろう。そこで本申請では、グラム陰性菌表層に特有かつ必須な構成成分であるリポ多糖体(LPS)に着目した。まず細菌ゲノム解析データベースから歯周病細菌のLPS合成系の第一段階のキーエンザイムであるUDP-3-O-(R-3-hydroxymyristoyl)-GlcNAc deacetylase(LpxC)をコードするlpxCホモログ遺伝子候補を検索し、大腸菌のそれと比較した。その結果、大腸菌LpxCは305aa であり、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(Aa)やFusobacterium nucleatumやEikenella corrodensおよびCampylobacter rectusのLpxCはそれぞれ、305 aa、283 aa、318 aa、294 aaから構成され大腸菌とその構造が類似していた。一方、Porphyromonas gingivalis(Pg)、 Prevotella intermedia、 Prevotella nigrescens、 Bacteroides fragilis、 Capnocytophaga ochraceaのLpxCは462~465aa から構成され、LpxC のC末端にβ-hydroxyacyl-acyl carrier protein dehydratase(FabZ)が融合したbifunctionalタンパク質構造となり、大腸菌とは異なっていた。次にPCR法によって歯周病細菌A aおよびPgそれぞれのLpxCホモログ遺伝子を増幅して、従来のLpxC発現ベクターを構築したが、必須遺伝子のためか十分な発現量を得ることができなかった。グラム陽性菌Brevibacillus Expression Systemベクター系を試みている。大腸菌および緑膿菌に対してLpxCを阻害する化合物であるCHIR-090に類似するCHR-12を合成できたので、現在歯周病細菌AaおよびPgに対する増殖阻害やバイオフィルム形成阻害効果を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画はほぼ順調に進んでいる。その中で歯周病細菌P. gingivalis(Pg)のLPSの化学構造は、大腸菌をはじめとする腸内細菌科に属するグラム陰性菌のLPSのそれとは大きく異なっている。LPS合成系の第一段階のキーエンザイムであるLpxCを比較すると歯周病細菌は大腸菌LPSの化学構造が似ているものと異なるもので2つのグループに分類されるという興味深い分析結果が得られた。大腸菌および緑膿菌LpxCを阻害する化合物であるCHIR-090に類似するCHR-12の阻害パターンも予備実験ではLpxC の構造が異なるPgは比較的阻害しにくいことが判り、新しい知見が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
1)課題である歯周病細菌A. actinomycetemcomitans(Aa)およびP. gingivalis(Pg)それぞれのLpxC発現ベクターの構築を引き続き行い、歯周病細菌リコンビナントLpxCを作製・精製する。 2)得られた歯周病細菌リコンビナントLpxCについて、Hernick M.の文献(Fluorescence-Based Methods to Assay Inhibitors of Lipopolysaccharide Synthesis ; Methods in Molecular Biology, vol.739, pp. 123-133, 2011)を参考に、LpxCの活性測定および阻害活性測定系を確立する。 3)大腸菌および緑膿菌に対してLpxCを阻害する化合物であるCHIR-090の類似化合物CHR-12について歯周病細菌AaおよびPgなどに対する増殖阻害効果およびバイオフィルム形成阻害効果について調べる。併せてリコンビナントLpxCに対する阻害効果も調べたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
順調に25年度は研究計画を進めることができた。ただし、A. actinomycetemcomitans(Aa)およびP. gingivalis(Pg)、それぞれのLpxC発現ベクターの構築を行ったが、従来の大腸菌での発現系では十分なリコンビナント蛋白の発現が得られなった。そのため、次のステップの精製やLpxCの活性測定系の確立のための研究経費が次年度への繰越となった。 従来の大腸グラム系から陽性菌Brevibacillus Expression Systemベクター系に代えてLpxC発現を行い、さらにリコンビナント蛋白の精製を今年度試みたい。 Hernick M.の文献(Fluorescence-Based Methods to Assay Inhibitors of Lipopolysaccharide Synthesis ; Methods in Molecular Biology, vol.739, pp. 123-133, 2011)を参考に、LpxCの活性測定および阻害活性測定系を確立するにあたっての合成基質の購入など、次年度繰越分については上記のような実験経費に当てたい・
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