研究課題
歯周病の発症と進行には歯肉縁下プラーク中のグラム陰性細菌の割合の増加が深く関わっている。グラム陰性細菌に特有なリポ多糖体(LPS)は歯周病の炎症や組織破壊に関わっている。本研究ではLPS合成系を阻害することで、歯肉縁下プラークのグラム陰性細菌を抑制し、歯周病の症状改善に繋げることを目的とした。LPS合成系の細菌必須遺伝子UDP-3-O-(R-3-hydroxymyristoyl)-GlcNAc deacetylase(LpxC)の 阻害リード化合物CHR-12は大腸菌に類似したLPS構造を持つ歯周病細菌Aggregatibacter actinimycetemcomitansやFusobacterium nucleatumにおいては増殖阻害やバイオフィルム形成阻害をMIC;1~10μg/mLの濃度で認めた。一方、LPS構造が大腸菌のそれとは異なるP. gingivalis(Pg)、 P. intermedia(Pi)、 P. nigrescens 、C. ochraceaなどでは阻害効果がMIC;100μg/mL以上と弱かった。大腸菌とは異なるPgのLpxCの構造と機能はとても興味深い。そこで、PgからlpxCホモログ遺伝子候補を特定して、Brevibacillus Expression System ベクター系で、PgLpxCリコンビナント蛋白発現を行った。その結果、PgのLpxCリコンビナント蛋白発現が認められ、蛋白結晶化、X線結晶解析などにおいてPgLpxCの構造と機能解明に関する足掛かりを得た。PgリコンビナントLpxC 蛋白を用いて、Hernick Mの方法(Methods Mol. Biol. 2011;739:123-33)を基にその酵素活性測定を試みたが、既存の基質ではPgのLPSの脂肪酸の構成が異なるためか活性測定系の確立には至らなかった。さらにメトロニダゾール(MNZ)について臨床分離株PgとPiの感受性およびメトロニダゾール耐性遺伝子nimの有無についても調べた。それぞれのMICはPgでは0.016μg/mL~0.064μg/mL、またPiでは0.016~0.125μg /mLで、いずれもMNZ感受性であった。またいずれからもnimは検出されなかった。MNZは我が国でも歯周病の治療薬として有効であろう。
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緑膿菌感染症研究会講演記録
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