研究課題/領域番号 |
25670798
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山田 安希子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70452646)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 性ホルモン / アロマターゼ / 脂質代謝異常 / 肥満 |
研究概要 |
自己免疫疾患の発症には様々な要因が関与するが、特に閉経期以降の女性に多く発症することが知られている。閉経によって女性ホルモンであるエストロゲンが欠乏すると太りやすい体質となり、加えてライフスタイルの近代化が肥満の誘導を加速している。一方で近年、肥満脂肪組織では慢性炎症が引き起こされていることが報告された。しかしながら、肥満脂肪組織における炎症が全身の免疫システムに及ぼす影響については未だ解析がなされていない。したがって、本研究は涙腺・唾液腺を標的とする自己免疫疾患であるシェーグレン症候群について、肥満を介した発症メカニズムの解明を行うことが目的である。 解析には肥満を伴うシェーグレン症候群モデルマウスである、アロマターゼ遺伝子欠損マウス(ArKOマウス)を用いた。ArKOマウスは加齢に伴い、肥満と共に唾液腺、涙腺に限局した炎症性病変を認める。アロマターゼが主に脂肪細胞によって産生されることから、脂肪組織が炎症に及ぼす影響に着目し、脂肪組織に浸潤する免疫細胞についてフローサイトメトリーによる解析を行った結果、ArKOマウスの脂肪組織では樹状細胞とマクロファージの浸潤が増加していることが示された。 また、脂肪組織に集簇するマクロファージについて詳細に解析を行うため、脂肪組織におけるマクロファージ関連遺伝子の発現を調べたところ、炎症促進に働くM1マクロファージ関連遺伝子の発現増加が認められた。さらに、脂肪組織の免疫染色を行った結果からも、ArKOマウスの脂肪組織にはマクロファージの浸潤が増加していることが分かった。これらのことから、ArKOマウスでは、脂肪組織にM1マクロファージが集簇し、このことがシェーグレン症候群の病態に関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の大きな目的は「肥満脂肪組織が免疫細胞に及ぼす影響を解析する」ことであった。肥満を伴うシェーグレン症候群モデルマウスである、アロマターゼ遺伝子欠損マウス(ArKOマウス)を用いた解析より、ArKOマウスの肥満脂肪組織では、マクロファージの浸潤が増加しており、特に炎症促進に働くM1マクロファージの浸潤の増加が示された。したがって、肥満脂肪組織がM1マクロファージの集簇を誘導し、このことがシェーグレン症候群の病態増悪に関わっていることが示唆された。 また、そのほかの免疫細胞が病態に与える影響については、T細胞及びB細胞を欠損するRAG2欠損マウスを用いて、ArKOマウスのリンパ球をRAG2欠損マウスに移入し、病態に及ぼす影響を観察したが、炎症は誘起されなかった。 したがって、研究対象となる免疫細胞がマクロファージにしぼられ、病態発症のメカニズムの概要がつかめたことから、当該年度は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度で得られた研究成果である、「肥満脂肪組織がM1マクロファージの集簇を誘導し、このことがシェーグレン症候群の病態増悪に関わっている」という結果について確証をえるために、アロマターゼ遺伝子を欠損していないマウスに対し、アロマターゼ阻害剤を用いた解析を行い、同様の結果が得られるかを検証する。また、当該年度では腹部の脂肪組織を用いた解析を行っていたため、今後は頸部の脂肪組織を用いた解析を行い、さらに顎下腺・涙腺特異的な炎症との関連性についての検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究はおおむね順調に進展しているが、計画が若干ずれたため繰越の助成金が生じた。 申請研究費は、疾患モデル動物の維持管理(滅菌資料、床敷、ケージ、給水瓶などの消耗品)、その他病態解析に必要な試薬などの購入に使用する。
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