研究課題/領域番号 |
25670798
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山田 安希子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70452646)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 性ホルモン / アロマターゼ / 脂質代謝異常 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究はシェーグレン症候群について、肥満という新しい視点から発症メカニズムの解明を行う。自己免疫疾患は、閉経期以降の女性に多く発症する。閉経によってエストロゲンが欠乏すると太りやすい体質となり、加えてライフスタイルの近代化が肥満の誘導を加速している。一方で近年、肥満脂肪組織では慢性炎症が引き起こされていることが報告された。しかしながら、肥満脂肪組織における炎症が全身の免疫システムに及ぼす影響については解析がなされていない。したがって、本研究では、肥満と自己免疫疾患との関連性を探る。 解析には、エストロゲンの合成酵素であるアロマターゼを欠損したマウス(ArKOマウス)を用いている。このArKOマウスは、加齢に伴い内臓脂肪が蓄積した肥満体を示す。またArKOマウスはシェーグレン症候群を自然発症する。アロマターゼが主に脂肪組織で産生されることから、ArKOマウスの脂肪組織に浸潤する免疫細胞について解析を行ったところ、コントロールマウスと比較してマクロファージの浸潤が増加しており、特に、炎症の促進に働くM1マクロファージが集簇していることが明らかになった。さらに、頸部リンパ節についても同様にM1マクロファージが有意に増加していた。これらのことから、ArKOマウスでは脂肪組織におけるM1マクロファージの集簇がシェーグレン症候群の発症あるいは増悪に関与する可能性が示唆された。 当該年度は、シェーグレン症候群におけるアロマターゼの役割について確証を得るため、他のシェーグレン症候群モデルマウス(胸腺摘出によってシェーグレン症候群を発症するモデルマウス)に対して、アロマターゼ阻害剤を投与したところ、病態の増悪が観察された。加えて、マクロファージの割合の増加も認められた。このことからも、アロマターゼが欠損すると、マクロファージの集簇を介してシェーグレン症候群の発症が誘起されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シェーグレン症候群の発症あるいは増悪に対するアロマターゼの役割について、アロマターゼ阻害剤を用いて、詳細な解析を行うことができた。またこれまでの研究成果のとりまとめを行うなど、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ArKOマウスの肥満脂肪組織の免疫細胞をコントロールマウスに移入し、シェーグレン症候群の発症あるいは病態に及ぼす影響を解析する。また、肥満のコントロールによりシェーグレン症候群の発症や病態の抑制が可能であるかを調べるため、ArKOマウスに対する食事療法や運動療法による肥満治療が発症及び病態に及ぼす効果を解析する。さらに、ArKOマウスを用いて得られた結果について多角的な検討を行うため、関節リウマチの疾患モデル(MRL/lprマウス)、1型糖尿病モデル(NODマウス)などを用い、シェーグレン症候群モデルで得られた知見との共通点または相違点を詳細に検討する。最終的に、臨床サンプルを用いて解析を行うことにより、臨床応用への可能性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後の休暇又は育児休業による中断のため。
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次年度使用額の使用計画 |
疾患モデル動物の維持管理(滅菌飼料、床敷、ケージ、給水瓶などの消耗品)、病態解析に必要な試薬の購入に用いる。
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