歯周疾患における破骨細胞性骨吸収や関節リウマチ性骨破壊は、骨形成を上回る成熟破骨細胞の数の増加と機能亢進によると考えられている。破骨細胞分化・細胞融合・機能発現に関しては報告が多くされているが、破骨細胞前駆細胞の増殖や機能維持に関する報告は少ない。私共が樹立した破骨細胞前駆細胞株4B12細胞は、その細胞維持にマウス胎児頭蓋冠由来間葉系細胞の培養上清が必要不可欠であることを報告した。この結果は、破骨細胞前駆細胞機能維持因子の存在を示唆している。本研究は、この因子の同定、発現調節機構、そして破骨細胞前駆細胞機能維持機構を明らかにし、骨破壊における役割を解明することを目的としている。 M-CSF以外に、Insulin-2、Nidogen-2、IGFBP-2そしてFibronectinN末端断片が破骨細胞前駆細胞機能維持因子であることを同定した。IGFBP-2-/-骨髄細胞からの成熟破骨細胞への分化誘導は、IGFBP-2+/+骨髄細胞と比較して減弱したという報告はこれらの結果の一つと一致する。興味あることにIGFBP-2とFibronectin N末端断片30kDa(Fn30kDa)との間に相同性の高いアミノ酸配列領域を検出した。Fn30kDaは破骨細胞前駆細胞上で発現しているCD13に結合し、RANK、TRAF6、NFATc1、c-Fos発現を上昇させ、そして破骨細胞形成を促進した。Fn30kDaの腹腔内投与は、末梢血中のCD13/Mac-1陽性細胞数を増加させ、LPS誘導性頭蓋冠骨吸収を促進した。
|