研究課題
露出した歯髄に対して高い予知性を持つ象牙質再生法の確立は歯内療法の最大の目標の1つである。低出力超音波(Low-intensity pulsed ultrasound、LIPUS)は、1980年代に骨折治癒促進効果が証明されて以来、現在整形外科領域における理学療法として広く用いられている。前年度までの研究で単層に培養したマウス歯乳頭細胞株(歯髄細胞の前駆細胞)に対してLIPUS(SAFHS®4000J、帝人ファーマ)を照射することにより、強力な骨形成誘導能を有することで知られるBone morphogenetic protein-2 (BMP-2)の発現が有意に増強することを明らかとした。本年度においてはヒト歯髄細胞を用いてその検証実験を行った。LIPUS照射はBMP-2のみならずオステオポンチン(Osteopontin、OPN)の発現を有意に誘導した。細胞外基質タンパク質であるOPNは硬組織形成分化マーカーの一つであり、生体防御、組織修復、およびメカニカルストレスなどにおいて、その発現が誘導されることが知られている。また、修復象牙質が形成される過程において歯髄・象牙質界面にOPNが沈着し歯髄細胞が象牙芽細胞へと分化していくことが報告されており、修復象牙質の形成と密接に関係していると考えられている。OPNの発現誘導の機序を解析したところ、LIPUS照射により細胞外のATP量が有意に増加し、それに引き続きOPNの遺伝子発現量が誘導された。さらに、プリン受容体阻害剤を用いた阻害実験から、LIPUS照射によって細胞外に放出されたATPがOPNの発現誘導に関与している可能性が示唆された。これらの知見は、修復象牙質の形成誘導においてLIPUS照射が有効に作用する可能性を示唆するものと考えられる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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