研究実績の概要 |
日常臨床において、根管治療によっても治癒しない難治性根尖性歯周炎にしばしば遭遇する。難治性根尖性歯周炎の原因を理解するためには, バクテリア側の要因のみならず, 宿主側の要因についても目を向ける必要性がある。そこで本研究は, 難治性根尖性歯周炎罹患歯を有する患者からゲノムDNAを調整し, 炎症性サイトカインや破骨細胞の分化に関連すると報告されている遺伝子群についてのSNP解析を行うこととした。そして, 得られたデータを統計処理し, 発症に対する遺伝的バックグラウンドの関連性(リスク)について解析すれば, 難治性根尖性歯周炎の遺伝子診断への応用につながると考えている。そこで, 健常者と難治性根尖性歯周炎と診断された患者からゲノムDNAを採取した。具体的には, 綿棒の先端を健常者および難治性根尖性歯周炎罹患患者の頬粘膜に押し当てて, 10回ほど擦って口腔粘膜細胞を採取し, この口腔粘膜細胞からゲノムDNAを調製して-80℃のカギ付き冷凍庫にて保管した。最終的に各々19サンプルづつ採収した。過去の報告(Journal of Endodontics, 2015, Volume 35, Number 9, 1186-1192)において, 難治性根尖性歯周炎の発症に関連するとされているIL-1B遺伝子のイントロンに存在するSNPであるSNPID:rs1143643について解析したところ, 健常群と発症群との間に有意差は認められなかった。過去の報告は, 白人が対象であったのに対し, 本研究は日本人からサンプルを採収している。すなわち, 同部位のSNPにおいても人種間で発症に差異が生じることが解析の結果明らかとなった。
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