研究課題
近年,Network Medicineの概念から糖尿病に代表される代謝性疾患の治療法が更に包括的なものとなっている.咀嚼機能の低下と糖尿病や肥満などの代謝性疾患との関連は示唆されているが,咀嚼機能と代謝性疾患を繋ぐ明らかなエビデンスは認められない.本研究では,咀嚼機能の低下により生じる食習慣の質的低下が,糖代謝機構の恒常性を障害することを示し,咀嚼が肝臓を刺激するメカニズムについて明らかとすることを目的として行った.マウスを粉末食にて長期飼育し,インスリンなどの血糖値の調節ホルモンの分泌量の変化について生化学的手法を用いて検討を行った.長期飼育を25週齢まで行い,実験対象として用いた.採取した血液について,粉末食群の平常時のインスリン濃度の低下,アドレナリン,コルチコステロンの上昇が認められ,平常時血糖値の有意な上昇が認められた.加えて,行動についても粉末食飼育群とコントロール群の間に違いが認められたため,それらについて2報の論文にまとめ,論文として発表を行った.上記の結果に加え,粉末食飼育マウスの中枢セロトニン神経系の異常についても確認された.食習慣の崩壊は咀嚼活動による神経系、および内分泌系を介した全身的な賦活化を失わせ,長期的には糖代謝機構の恒常性を破綻させることで代謝性疾患の発症基盤となることが示された.食生活の崩壊と肥満や生活習慣病との関連が示され,『食生活の悪化』は深刻な社会問題となっている.しかしながら,食生活の悪化が咀嚼機能の低下に起因するものであっても,治療の選択肢に補綴治療が求められるケースは少ない.我々は咀嚼運動が全身的に様々な作用を有することを示したが,これらは糖尿病のNetwork Medicineに歯科が参画することを推進し,代謝性疾患の診断・治療・予防に歯科が主体となる咀嚼機能の維持・回復の意義について明らかとすることに繋がるものと予想される.
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