研究課題/領域番号 |
25670830
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10206766)
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研究分担者 |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30302152)
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50400255)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザー / 磁気回路 / 窒素 / 固溶 / オーステナイト相 / フェライト相 / 磁性 / 非磁性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、レーザー描画磁気回路を応用したデバイスと磁場による生体組織誘導に分けられる。平成26 年度の計画は、昨年度の継続として、レーザー描画磁気回路を応用したデバイスの作製を中心に行った。磁気回路の基材となる窒素固溶の高耐食性オーステナイトステンレス鋼の製造方法を確立することができたため、レーザーの照射条件と相変態への効果について、レーザー照射による凝固収縮、照射後の変態相、レーザー照射部の耐食性を明らかにすることを試みた。 飽和磁束密度が高く磁気特性に優れたSUS XM27(Fe-26Cr-1Mo)を1200℃の窒素雰囲気(1atm)に保持することで、非磁性のオーステナイト相(γ相)を生成させ、γ相の生成速度を3次関数で数式化し、基材となるγ相の相厚を制御することに成功した。φ2.02~4.22mmのXM27丸棒を用い、外周を300μmだけγ相にしたディスクヨークを作製し、そのγ相の外周をレーザー溶接することで、レーザー溶解による凝固収縮を評価した。強度の高いレーザー光を照射すると、窒素ガスを発生して表面に大きな気泡が生じてしまうが、強度を弱め、基材の極表面をわずかに溶解するようにすると、脱窒素が効率よく進行し、表面をフェライト相(α相)に戻すことが可能であった。しかし、径の大きい(φ4mm以上)ディスクヨークでは、溶接部の凝固収縮により変形を生じた。これより、基材にレーザー描画を行う場合には、レーザー光を100~200μmに絞り、凝固収縮を軽減することが必要となることがわかった。EPMAによる元素分析によると、レーザー照射によるα相とγ相の境界には、懸念された金属間化合物(CrN、Cr2N)は見当たらなかった。また、α相とγ相の共存における耐食性も0.5V(vs.NHE)以上を示したため、脱窒素を効率良く行うための条件を確立することが次の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、窒素固溶の基材となるフェライト系ステンレス鋼(SUS XM27)の板材が実験遂行に必要であったが、板材自体が市販されていないため、φ20mmの丸棒を入手し、それを加工する計画に変更した。しかし、今年度も板材に加工できる業者が見つからず、基材作製に多くの時間と労力を要した。板厚1mmに加工した基材を十分に確保できなかったため、歯科用磁性アタッチメントに用いられているディスクヨーク用丸棒(φ2.02~4.22mm)を使用し、レーザー照射による凝固収縮、照射後の変態相、レーザー照射部の耐食性を調べることができた。しかし、現有設備のレーザー溶接機では溶解部を500μmまでしか絞ることができなかったため、磁性アタッチメントの製造メーカーに依頼して100~200μmに絞ったレーザー照射実験を行った。そのため、予定よりも少ないサンプル数しか実験できなかったこと、さらに製造ラインの合間に実験を行わなければならなかったことなどにより、実験計画にやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
加工業者を継続的に探し、実験に必要な基材を加工できるよう改善策を遂行する。現状では、基材作製にやや難はあるが、その他に大きな障害は無いため、実験に用いる標本数を減じることで対応可能である。また、磁気デバイスの製造業者が本研究課題に適したレーザー溶接機を所有し、レーザー照射を依頼できることから、平成27年度の計画に従い、実験を遂行する予定である。板材の入手が困難な場合においても、歯科用磁性アタッチメントのように丸棒材を用いたデバイス設計が可能であるため、研究期間内に所定の研究まで進めることが可能であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験遂行に必要なフェライト系ステンレス鋼(SUS XM27)の板材が市販されていないため、現有設備で必要な形状に加工する作業を行い、予定していた加工費を使用できなかったこと、また実験に用いる実験用基材の標本数を減じることで、板材および棒材の不足に対応したこと、さらに実験室の移転が年度内に行われ、計画全ての実験を遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
基材を加工できる業者に加工依頼し、所定の基材を購入する。また、平成26年度で遂行できなかったレーザー描画精度の確認及びシミュレーションソフトを使用した磁気回路設計を行い、組織誘導デバイスを作製する。これらの追加実験に必要な経費として次年度使用額を使用する予定である。
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