研究課題/領域番号 |
25670833
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古谷野 潔 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50195872)
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研究分担者 |
熱田 生 九州大学, 大学病院, 助教 (30423487)
鮎川 保則 九州大学, 大学病院, 講師 (50304697)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / Niche / 創傷治癒 / インプラント周囲上皮 |
研究概要 |
本研究は歯科インプラントの口腔内での長期維持のため、インプラント周囲における上皮封鎖性の効率的な獲得と向上を目指す。ただしその方法は従来のような生体親和性の高い材料の開発ではなく、インプラント周囲組織から「正常」かつ「チタン親和性」の高い組織を誘導することにある。すなわち通常は異物として認識されうるチタン製インプラントを「微小環境(Niche)」として初期培養環境におくことで、幹細胞にインプラント自体を生体の一部と認識させようとするものである。 具体的には当該年度において、in vitroにてチタンをNicheとしそこで教育された間葉系幹細胞(MSC)を作製。このMSCは計画通り、MSCを用いた細胞治療に関わる種々の技術と大量のデータを有している南カリフォルニア大学Dr. Shi研究室と連携をはかり、手技に準じることが出来た。さらにin vivoでインプラント周囲での組織安定性を図ろうとするものである。そのため3種類のヒト歯肉を採取しチタン上でMSCを選択的に培養、それをラット口腔内へのインプラント埋入時または埋入後に添加するものであった。本実験は現在執行中であり、試料の作製などを行っている。今後は実験の最終段階としてはインプラント周囲における軟組織および硬組織の慢性炎症の消失と、動物実験でも6割以上生じるインプラント周囲上皮深部増殖の抑制を組織形態的かつ生化学的に評価することにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究テーマとしての最終目標は臨床応用であるが、本研究では動物実験までを到達点とする。「チタン上Niche」で教育されたMSCを、インプラントモデルラットに注入し、インプラント周囲の組織変化を長期間観察・評価については、すでに2014年PLoS oneにて掲載されている。また使用するMSCは臨床を想定し歯周治療の終了したインプラント患者の歯肉から採取するものであるが既に倫理審査も通過しており、実験を進めるだけとなっている。この結果をもって大動物、臨床への基礎データとする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のタイムコースはわずかに2年である。研究体制としても、実験計画立案から研究遂行時の方向性を研究代表者の責任下で行い、また研究手技や具体的な指示は鮎川講師、また実験遂行は熱田助教で行っている。また南カリフォルニア大学のMSC研究の第一人者であるSongtao Shi教授を連携研究者に近い立場とし助言をもらっており、研究は順調に進んでいる。 今後はこのノウハウを応用し、「ヒトMSC」の投与を目指すものとする。注入用MSCの作製とその効果の検討についてはかなり難易度が高いものの、共同研究者はインプラント周囲上皮および幹細胞研究を長年続けているため、以下の実験に関し多少の試行錯誤は必要だが技術的には実現可能と考える 具体的にはインプラント埋入ラットへのMSC投与することから開始する。すなわちMSCの投与方法として局所投与と全身投与の検討である。さらに追加実験として「チタン周囲Niche」に適したMSCとして長幹骨骨髄、粘膜だけでなく顎骨骨髄、歯肉や膵臓などからも採取し評価する必要がある。各MSCでその働きが異なるからであり最適なものを検索する。投与する細胞濃度や投与回数などの条件にも検索が必要であろう。
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