本研究は歯科インプラントの口腔内での長期維持のため、インプラント周囲における上皮封鎖性の効率的な獲得と向上を目指すものであった。ただしその方法は従来のような生体親和性の高い材料の開発ではなく、インプラント周囲組織から「正常」かつ「チタン親和性」の高い組織を誘導することにある。すなわち通常は異物として認識されうるチタン製インプラントを「微小環境(Niche)」として初期培養環境におくことで、幹細胞にインプラント自体を生体の一部と認識させようとするものである。このような「Niche」を幹とした概念は間葉系幹細胞(MSC)を用いてのみ応用可能である。そこで本研究は発想としての独創性だけで手技的には簡易であり、歯科だけでなく人工物を使用するすべての医療、さらには幹細胞を用いた細胞治療全般にも応用可能な技術と考えられるため,将来的には幅広い分野への貢献を期待できるものとなった。
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