研究課題/領域番号 |
25670834
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
池田 通 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00211029)
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研究分担者 |
西村 正宏 鹿児島大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00294570)
井奥 洪二 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60212726)
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医療 / 骨代謝 / 骨形成 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 幹細胞 / 骨代替材料 |
研究実績の概要 |
骨再生医療には骨芽細胞またはその前駆細胞が必要であり、骨芽細胞に分化誘導可能な様々な幹細胞が紹介されている。本研究課題では、骨を誘導するには骨芽細胞系細胞だけでなく、破骨細胞系の細胞も共存させることが効果的であるという仮説が正しいか否かを明らかにすることを目的としている。破骨細胞誘導因子RANKLで3日間刺激したマウス骨髄由来マクロファージを直径0.5 mmのハイドロキシアパタイト(HA)球状顆粒と混合し、I型コラーゲンゲルで固めたものを頭頂部皮下組織に移植した。その結果、骨組織の誘導は認められなかったものの、少数のアルカリホスファターゼ(ALP)活性陽性細胞の出現が認められた。次に、マウス頭蓋冠より骨芽細胞を単離し、増殖させた上、骨髄由来マクロファージと1:1の割合で混合し、I型コラーゲンゲルで固めて頭頂部皮下組織に移植した。移植1ヶ月後に移植部位を摘出し、マイクロCTにて石灰化物の量を比較検討した。その結果、対照となるセラミック顆粒のみを移植した群に対して、骨芽細胞及び骨髄由来マクロファージを同時に移植した群では硬組織形成明らかに多いと判断された。現在これらの非脱灰薄切標本を作成し、詳細な所見を検討中である。 さらに、本研究の遂行過程で偶然に明らかになったことであるが、皮下にセラミック顆粒をI型コラーゲンで固めて移植した場合、セラミックの種類により出現細胞が異なる事を明らかにした。柱状粒子を有するHAを移植すると、周囲に形成された多核巨細胞の多くが酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ及びカテプシンK陽性の破骨細胞様細胞となり、一般的な球状粒子を有するHAの周囲にはどちらも陰性の異物巨細胞が多く出現し、生体内吸収性セラミックとして広く用いられているβ-リン酸三カルシウム顆粒周囲には、異物巨細胞以外全く形成されないことがわかった。現在これらのデータを学術論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、骨を誘導する移植医療において、骨芽細胞系細胞のみならず破骨細胞系細胞を同時に移植することが有効であるという仮説を明らかにすることに絞られている。マイクロCT画像上ではあるが、骨芽細胞系細胞及び破骨細胞系細胞の前駆細胞である骨髄マクロファージを同時に移植することで多量の骨形成があると判断され、この仮説が正しい事が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が今後の骨再生医療分野でイノベーションをもたらす可能性がある。今後は詳細な組織所見と定量評価によって全容を明らかにする予定である。また、骨外細胞形細胞とマクロファージの最適な比率を求めるとともに、これら2種類の細胞を移植することで骨誘導が活発になる分子機構を明らかにして行く方針である。
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