研究課題/領域番号 |
25670836
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
金指 幹元 鶴見大学, 歯学部, 講師 (80339811)
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研究分担者 |
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
出沢 真理 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50272323)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Muse細胞 / 臍帯 / 臍帯由来間葉系細胞 / 歯周組織再生 / 再生医学・医療 / 歯学 / 再生医工学 / ゼラチンハイドロゲル |
研究実績の概要 |
近年、ヒト間葉系組織中に多分化能を有するものの、造腫瘍性を持たないMuse(Multiliniage-differentiating stress enduring) 細胞が報告された。本研究の目的は、医療廃棄物である臍帯組織および便宜抜歯された歯に付着する歯根膜組織、歯髄組織中含まれるMuse 細胞を分離・培養工程の確立、および足場材(Scaffold)との複合体を調整し歯周組織工学を用いた新規歯周組織再生療法へ展開するための基礎データを得ることにある。 連携医療機関より臍帯を受け入れ(臍帯全体を細切して酵素処理するFull explant)、また矯正学見地から抜歯された“歯”から歯根膜組織、歯髄組織を酵素処理する事で得た。各細胞源からMuse細胞に関する各種プロトコールに準じて染色、セルソーターにおいてソーティングを行い96ウェルプレートにシングル細胞で播種した。臍帯組織は2検体、歯髄組織は6検体、歯根膜組織は3検体についてSSEA-3,CD105ダブルポジティブの陽性率、5~10日後のクラスター形成率を求めた。このうち歯根膜と歯髄の3検体は同一検体より得られた細胞であった。その結果、臍帯、歯根膜、歯髄MSCのSSEA-3陽性率はそれぞれ0.54±0.02%、0.40±0.22%、0.98±0.89%であり、クラスター形成率はそれぞれ0.22±0.01%、51.5±14.5%、21.0±4.7%であった。歯根膜、歯髄に比べ臍帯のクラスター形成率が少なかったのはCD146陽性のpericyteが豊富な集団であるためと思われた。 また、足場材としては多血小板血漿ゼラチンハイドロゲルを用いた臨床研究の結果からその安全性を報告した。 本研究は鶴見大学歯学部倫理審査委員会の審査と承認(受付番号:1203号)を得て行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度実績をもとに、臍帯組織からの初代細胞調整方法をFull explant(臍帯全体を細切して酵素処理する方法)とし、対照群の歯根膜組織、歯髄組織から得られる細胞と比較することが出来た。これら歯周組織関連細胞は3検体同一個体から得られたもので、同一個体でも由来組織が違うと、Muse細胞の発現率に違いが認められた。 そして歯根膜細胞はセルソーターを用いることなく、96ウェルプレートにシングル細胞で播種するだけで、ES細胞様塊すなわちMuse細胞様クラスターを形成する事も判明した。 さらに、高価なセルソーターを使用せずに磁気ビーズを用いたMuse細胞の分離方法も開発した。 本研究成果の一部を第141回日本歯科保存学会にてポスター発表したところ、歯周病学分野で優秀ポスター賞の受賞が内定した。 以上、総合的に判断して、おおむね順調に進んでいる、と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、上記臍帯組織、歯根膜組織、歯髄組織由来細胞から得られたクラスターを形成した細胞について、さらに市販の正常ヒト骨髄細胞、ヒト歯根膜細胞、ヒト皮膚細胞由来のクラスター形成細胞について3胚葉分化を分子生物学的に解析している。また一部SSEA-3抗体、基本培地を変更したため培養工程、染色方法の変更を行ったため抗体陽性率、クラスター形成率を再度調べる予定である。 現在、マウス実験的歯周炎感染モデルの動物実験計画書を本学動物実験委員会に提出し、審査中であり、承認が得られれば、GFPでラベルした各組織由来Muse細胞を血管内投与およびゼラチンハイドロゲル複合体を歯周局所に移植して、歯周組織局所の再生効果を組織学的に解析する予定である。 さらにMuse細胞を用いた一連の研究は、平成25年度私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院など教育研究装置施設整備費))「種々のヒト間葉系組織中Muse細胞分離機能解析システム(13補改革研究装置005)」に採択され、専用のセルソーターを得ることが出来たため、最終年度になるが平成27年度は研究を加速する事が出来ると考えている。
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