本研究ではγPGAのカルボキシル基に着目し、基材となるαTCPから溶出されるカルシウムイオンとのキレート結合に着目した。研究目的は、緊密封鎖環境を構築する骨再生システムを開発することである。前年度に調製された直径約1mmのαTCP微小球の埋入窩外への初期流出を抑えるために、今年度は骨欠損部を緊密に閉鎖するγPGA-αTCP複合化ゲルを調製することを中心に行った。低分子ジアミンまたはL-リジンを用いてアミド結合をγPGAとの間に形成させ架橋させることによりハイドロゲルを作製することを目標として、縮合剤を用いた一段階反応でゲルシートを作成した。脱水縮合剤はDMT-MMを用いた。脱水縮合剤はゲル調整後に水洗を繰り返して除去した。 ゲル作製にはγPGA(ヤクルト薬品工業株式会社)、L-リジン塩酸塩(ペプチド研究所)、脱水縮合剤としてDMT-MM(和光純薬)を用いた。また、分解速度の異なるハイドロゲルとして、シクロヘキサデキストリンを用いたエステル結合により架橋されたものの調製を試みたが、脱水縮合時にDMT-MMを用いたゲル膜と比較してエステル結合を利用した架橋は架橋効率が低く、遮断膜としての強度を得ることができなかった。日本白色家兎にクリティカルサイズ以上の骨欠損を大腿骨遠位端に作製し、前年度に作製した球状粒子凝集体を充填し、その上をγPGA遮断膜ゲルで封鎖することにより骨欠損部を再建した。移植後1ヶ月程度で埋入されたビーズ状αTCP顆粒は溶解または吸収が早くも始まっており、2ヶ月後には完全に消失していることが確認された。また、得られた試料にビラヌエバ染色を行ったところ、埋入後2ヶ月の試料(遮断膜―αTCP顆粒使用)では埋入直下の骨再生部位に一部石灰化の亢進が認められた。
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