研究課題/領域番号 |
25670840
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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研究分担者 |
戸塚 靖則 北海道大学, -, 名誉教授 (00109456)
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
安田 元昭 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (90239765)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アデノウイルス / 腫瘍 / GFP / 溶解 / センサー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現在開発している腫瘍溶解アデノウイルスを応用して、腫瘍を検出するためのセンサーを開発することである。アデノウイルスを感染させるとARE-mRNAが核外輸送・安定化され、この現象はウイルスの複製に重要であることが明らかになっている。我々は、一部の初期遺伝子を欠損したアデノウイルス(AdΔE)は、あらかじめARE-mRNAが核外輸送・安定化しているがん細胞では増殖でき、ARE-mRNAが核内にとどまっている正常細胞では増殖できない可能性がある。本研究ではAdΔEのゲノム中に緑色蛍光タンパク(GFP)を組み込んだアデノウイルスを作成し、がん細胞のみが発行し、蛍光を照射するとがんを可視化できるシステムを構築する。 1センサーの開発: 当初の研究計画により、アデノウイルスの後期遺伝子の一部にGFP遺伝子を組み込んだ組み換えウイルスの作成に取り組んだ。しかしながら、ウイルスプラスミドが非常に大きく(約40kb)、GFP遺伝子を挿入することが非常に難しく、これまでのところ成功していない。 2AdΔEの腫瘍溶解効果: GFPを挿入する前のAdΔEの持つ腫脹溶解効果を検討した。HeLa(子宮頸がん)、MCF7(乳がん)、PC3(前立腺がん)、A549(肺がん)、HSC3(舌がん)、Ca9.22(歯肉がん)などのがん細胞、もしくは、BJ(陰茎上皮細胞)、HGF(歯肉線維芽細胞)、HAEC(上気道上皮)などの正常細胞などを用いてウイルス生産効率を検討したところ、がん細胞での生産効率の方が正常細胞のそれより高く、AdΔEが腫瘍溶解効果を持つことがわかった。 現在、他のウイルス作成法を採用するか、もしくはGFPを新たに挿入しないでも使えるアデノウイルスの使用を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、GFPを組み込んだ腫瘍溶解アデノウイルスを作成したが、成功しなかった。我々はアデノウイルスのプラスミドを所有しており、このプラスミドの適当な制限酵素siteにPCR法で増幅させたGFP遺伝子の挿入を試みたが成功しなかった。これはプラスミドが約40kbと非常に大きく、取り扱いが困難なことが大きな理由であると考える。従って、当初の研究計画より遅れていると言わざるをえない。それに対して、センサーの大元になる腫瘍溶解アデノウイルスAdΔEは、正常細胞と比べてがん細胞でより生産効率が高かったので、このウイルスは腫脹溶解効果を持つことが確認できた。今後、複数の計画を立てセンサーの開発に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、腫瘍センサーになり得るアデノウイルスの作成に引き続き取り組む。これまではアデノウイルスのプラスミドを用いて、GFP遺伝子を挿入する手法を用いた。しかしアデノウイルスの作成には組み換えを用いた手法が一般的である。この方法は、ウイルス遺伝子の相同部位が細胞内もしくは大腸菌内で組み換えを起こす性質を利用した方法である。挿入したいGFP遺伝子の両端に、ウイルスゲノムの挿入部位に存在する短いウイルス遺伝子を配置したプラスミドを作成する。次に、ウイルスゲノム遺伝子と作成したGFP+ウイルス遺伝子を持つプラスミド遺伝子を同時に細胞もしくは大腸菌に導入する。アデノウイルスの場合、およそ0.1~1%程度の確率で遺伝子組み換えが起こり、組み換えウイルスが作成される可能性がある。 また、これらの手法が成功しない時は、市販されているGFP発現用のアデノウイルスを購入することもあり得る。このウイルスを使う時は、開発した腫瘍溶解アデノウイルスAdΔEと一緒に投与する。このGFP発現ウイルスはE1Aが存在するとGFPが発現するシステムで、一緒に存在するAdΔEが複製するとGFPが発現する。従って、腫瘍の部位でGFPが発現することになる。以上の様な複数の計画でセンサー開発に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
アデノウイルスプラスミドにGFPを挿入するのに手間取り、本来計画していたがん細胞でのセンサーの効果を検討できなかった。また我々の研究室の耐震工事等の理由で思い通りに研究が遂行できなかった。以上の様な理由で、計画していた使用額には達しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究計画にも示した様に、次年度は腫瘍センサーの作成に取り組み、その効果を培養細胞を用いて確認する。さらに、当初の計画通りヌードマウス等を用いてin vivoでセンサーの効果を評価する予定である。 従って次年度は培養細胞購入や動物実験に必要な、動物、器具などを主に購入し研究を推進する予定である。そして残りの科研費でさらに効率の高いウイルスセンサーを作成し、その効果を検討するためにアデノウイルス生産効率測定キットや、XTT assayキットを購入する予定である。
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