研究課題/領域番号 |
25670843
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10312852)
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研究分担者 |
田渕 克彦 信州大学, 医学部, 教授 (20546767)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シナプス接着因子 / ニューレキシン / ニューロリギン |
研究概要 |
I. 臨床的探索:臨床検体による口腔癌のシナプス接着因子の発現の検討 筑波大学附属病院歯科口腔外科で手術を行った口腔癌の臨床検体60例を選択し、ニューレキシンの抗体を用いてLsAB法で染色を行い、口腔癌での発現の状態を半定量的にスコア化し、臨床病態(性別、年齢、喫煙、TNM分類、Stage分類、分化度、pN、YK分類、予後)との比較をおこなったところ、発現陽性例のカットオフ値を5%とした場合、5年生存率との関連が、発現群の方が予後が良好な傾向が見られたが有意な差は見られなかった(P=0.3) II. 基礎的探索:子宮内エレクトロポレーション法によるマウスへの遺伝子導入 マウスニューロリギン2のDNA配列をコンピュータプログラムにかけてshRNAのターゲット候補配列を複数見出し、それに対するオリゴDNAを作成しニューロンカルチャーに導入して、ニューロリギン2の発現が抑えられるものを選別した。細胞膜局在シグナルが付加されたGFPをコードする遺伝子をpCAGGSベクターに挿入したコンストラクトと選んだshRNA用コンストラクトをE14.5のマウス胎児の脳室に打ち込み、エレクトロポレーションによってこの時期の脳室周辺ニューロブラストに導入した。生まれた時点で、LEDライトを外から当ててGFPが光っている子供を選別し、予定の大脳皮質II/III層の錐体ニューロン特異的に遺伝子導入されたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床的探索については、ニューレキシンについては、必要と思われるサンプル数の確保と免疫染色については行うことが出来た。また、臨床・病理学的な病態についてのデータも集積された。しかし、予想外に発現群の数が少なく、有意な差が出にくく、より症例数を増やす必要性があると考えられた。また、ニューロリギンについての解析の作業手順が悪かったため、同時に解析が出来ず、染色が次年度に継続して行われることとなった。基礎的探索については、子宮内エレクトロポレーション法によるマウスへの遺伝子導入は非常に順調にすすみ、ニューロリギンのshRNA導入ができたので、次年度への解析が可能な状態になった。一方、in vitroの生化学的な解析についてはニューレキシンを中心としておこなう予定であったが信州大側のプロジェクトは順調に進んでおらず、ニューレキシンの細胞内領域の構造が天然変性タンパク質の特徴を示すかどうかCDスペクトルとNMRでの確認PI(4,5)P2とコレステロールと結合するかを検討は終了しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、臨床的探索としては、臨床検体の収集、選択は継続し、症例数を増やして行う。また、今年度行えなかった、他のシナプス接着因子のニューロリギンを染色し、臨床病態との関わりを検討する。さらに、比較対照とするためのp53, Ki67などを免疫染色して比較を行い、腫瘍の増殖との関連も調べる。 基礎的探索としては、子宮内エレクトロポレーション法によって導入したマウスの組織学的観察を行い血管新生の異常について観察する。さらに、血管増生が起こるかどうかを、マトリゲルなどを用いて、マウスの皮下に注射して血管新生能を検討する。可能であれば、他のシナプス接着因子についても、子宮内エレクトロポレーション法による特異的抑制をおこなって血管の走行の異常について観察する。また、ニューレキシンのin vitroの実験を加えて行う。ニューレキシンの細胞内領域の構造が天然変性タンパク質の特徴を示すかどうかCDスペクトルとNMRで確認を引き続き行うと同時に、PI(4,5)P2とコレステロールと結合するかも検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
信州大でのプロジェクトでは、既存の資産を利用した子宮内エレクトロポレーションによる解析を行って結果が得られており、マウス等の購入等の安価なものの使用で成果を達成できたが、一方、生化学的な解析が年度後半にずれこみ、高価な生化学的な試薬の使用が翌年に繰り越されることとなったため。 信州大での生化学的解析のプロジェクトは平成26年度にずれ込んでいるが、これらに用いるため平成26年度前半に経費がかかることとなるため、全体の使用分とあわせて本年度内にすべて使用する必要が生じる予定である。
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