研究実績の概要 |
【材料・方法】転移性および非転移性口腔癌細胞株SAT, HO1-u-1, SAS, HSC-3, HSC-3-M-3, OSC-19を用い,miRNAマイクロアレイによる発現プロファイルを作成し,miRNA let7 familyの発現について他のmiRNAとも比較検討した。次いで,miRNA let7 familyのうち発現低下を示す口腔癌細胞株にはmimicを導入,発現増加を示す口腔癌細胞株にはinhibitorを導入し,増殖能,浸潤能などの細胞機能の変化についても検討した。さらに口腔癌70例の臨床検体において,real-time PCRを用いてmiRNA let7 familyの発現を検討した。【結果】ヒト表皮角化細胞であるHaCaT細胞と比較し,いずれの口腔癌細胞株においてもmiRNA let7 familyの発現低下が認められた。非転移性細胞株と比較し,転移性細胞株においてlet-7a, let-7b, let-7d, let-7f, let-7g, let-7iの発現は低下していた。また、臨床検体におけるlet-7familyの発現は頸部リンパ節転移に伴い有意に増加していた。一方、mimic,inhibitor導入により口腔癌由来細胞株の増殖能、浸潤能に有意な差は認めなかった。以上の結果から癌抑制型miRNAであるlet7 familyは,癌遺伝子を抑制していると考えられる。転移性口腔癌細胞ではmiRNA let7 familyの発現が低下していることから,癌遺伝子の働きを減弱し,リンパ節転移を亢進している可能性が示唆された。
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