研究実績の概要 |
唾液腺萎縮による唾液分泌量の低下は様々な障害の原因となり、唾液分泌量は患者のQOLを左右する重要な因子の一つとされている。唾液腺の機能回復を狙った様々な研究が盛んに行われているが、治療法にまで到達できていないのが現状である。近年、唾液腺が発生する過程で様々な転写因子が機能していることが徐々に解明されてきた。それら転写因子のノックアウトモデルでは唾液腺形成不全が見られるため、我々は外因性に遺伝子発現を調節することが、困難とされている唾液腺再生療法開発の糸口になると考えた。 唾液腺発生過程に関与する5つの転写因子を候補として Affymetrix®社製GeneChip® Human Genome U133 Plus 2.0 Arrayにて発現解析を行い、その結果をトミーデジタルバイオロジー社のインジェヌイティー パスウェイ アナリシス(IPA)を用い解析した。その結果、morphology, developmentのpathwayにおいてGibberellic acidの併用をした細胞で発現が2倍以上の亢進を認めた15遺伝子の中から6つの転写因子(PITX1, TP63, SNAI2, PAX6, SIX1, KLF4)に注目した。Gateway system®を用いて6種類の転写因子を搭載したレンチウイルスベクターを構築し、ヒト線維芽細胞に導入し、感染後のセレクションマーカーとしてVenus (EYFPのVariant)を使用し Flow cytometryを用いてVenus陽性細胞のセレクションを行った。6遺伝子を強制発現させ、分化誘導培地にて培養した細胞は細胞骨格に変化を認め、さらに唾液腺のマーカーであるアミラーゼの発現が亢進した。 以上の結果から、6つの転写因子(PITX1, TP63, SNAI2, PAX6, SIX1, KLF4)は唾液腺再生医療開発において重要な役割を果たす因子である可能性が示唆された。
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