研究課題/領域番号 |
25670847
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
|
研究分担者 |
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
森 良之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70251296)
高戸 毅 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90171454)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ステムセル・レザバー / 造血幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 異所性骨 / BMP-2 / VEGF |
研究概要 |
本研究の目的は、新規化合物を用いて造血幹細胞・骨髄幹細胞を生体内から持続的に再生骨へ動員し、再生骨内にいわば「ステムセル・レザバー」を構築して、長期にわたり骨量と骨質を維持できる機能的な骨再生を実現することである。 前年度は、マウスBMP-2誘導再生骨モデルに対するVEGF投与とステムセル維持の評価として、rhBMP-2および担体としてアテロコラーゲンを凍結乾燥したBMP-2ペレットをマウスの背部皮下へ移植し異所性骨の誘導を行い、8週後の骨および骨髄の形成を評価した。この結果、アテロコラーゲンの濃度および変性条件によって骨や骨髄の経時的変化は大きく異なることが明らかとなった。8週間程度で骨形成や骨髄形成を評価するためには、アテロコラーゲンをある程度熱変性させた条件が検討に適していることが判明し、以降熱変性アテロコラーゲンを用いた実験で検討を進めた。また、骨髄における幹細胞の変化を、幹細胞マーカーを用いて免疫組織化学的に観察し、形態計測学的に評価した。これらの結果をもとに、BMP-2誘導再生骨の骨量・骨質を維持し、骨髄における幹細胞の貯蔵庫(ステムセル・レザバー)を構築するのに適したVEGF投与条件を検討した。 さらに、VEGF誘導能を有するONO-1301を使用し、in vivoで条件相当のVEGFを分泌するようなONO-1301の条件を検討し、さらに、これらを実現するための徐放化設定条件を検討した。現在、これらの検討を元に、再生骨においてステムセル・レザバーを構築できるONO-1301の徐放条件を設定しており、現在検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rhBMP-2を用いた異所性骨作製に際し、当初担体としてアテロコラーゲンゲルを用いていたが、免疫正常のマウスへの移植後の組織反応が強く、経時的な骨形成を確認できなかった。そのため、アテロコラーゲンゲルに代わる担体の検討を行った。結果として、熱変性アテロコラーゲンを用いることで良好な結果を導くことができた。これらの課題を乗り越えて、骨髄における幹細胞の変化を、幹細胞マーカーを用いて免疫組織化学的に観察し、形態計測学的に評価した。また、BMP-2誘導再生骨の骨量・骨質を維持し、骨髄における幹細胞の貯蔵庫(ステムセル・レザバー)を構築するのに適したVEGF投与条件を検討し、VEGFの効果および投与条件についてのデータを取り揃え、結果をえた。そのため、おおむね順調に進展していると判断された。
|
今後の研究の推進方策 |
ビーグル皮下移植実験による機能型再生骨の確立として製造条件から、BMP-2/ONO-1301含有再生骨を作製する。ビーグルの背部皮下に上記再生骨を移植し、骨形態評価を行う。さらに、組織切片を作製し、各種染色法を用いて組織学的に観察する。これらの結果を元に、骨形成に優れ、その維持も良好な製造条件を選定する。 また、ビーグル下顎骨欠損モデルに対する機能型再生骨移植と骨再生の検証として、最後に、ビーグルの下顎に骨区域欠損を作製し、製造した再生骨を移植する。再生骨の形状に関しては、あらかじめ同年齢のビーグル頭蓋のCTを撮影し、コンピューターシュミレーションで欠損部の3次元データを作成し、その3次元データをもとに、ONO-1301含有PLGA多孔体を3 次元造形切削しrhBMP-2を投与して、欠損部の3 次元形状と一致した再生骨を作製する。再生骨を欠損部に移植し、両端の骨片を含めチタンプレートで固定し移植後経時的に移植部の単純X線撮影をする他、6ヶ月で移植組織を摘出し、DEXA法を用いた骨塩定量、3D-μCTによる骨形態評価を行い比較検討する。さらに、組織切片を作製し、各種染色法を用いて組織学的に観察する。これらの結果を元に、最終的な機能型再生骨の製造技術を確立する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
再生骨においてステムセル・レザバーを構築できるONO-1301の徐放条件を設定する。 徐放化ONO-1301をPLGA 多孔体に組み込み、再生骨の骨格を作り、そこにアテロコラーゲンに混和したBMP-2を投与し、凍結乾燥して作製した再生骨を製造する。また、ONO-1301の濃度、PLGAの分解速度を設定した再生骨を作製し、マウス背部皮下に移植し骨形態評価を行う。この結果を元に、骨量・骨質の維持、ステムセル・レザバーの構築に適した条件を絞り込む。ついで、BMP-2/ONO-1301含有再生骨を作製し、ビーグル背部皮下に移植し、骨形態評価および組織学的に観察する。これらの結果を元に、骨形成に優れ、その維持も良好な製造条件を選定する。また、ビーグルの下顎に骨区域欠損を作製し、ONO-1301含有PLGA多孔体にrhBMP-2を投与して、欠損部の3次元形状と一致した再生骨を欠損部に移植し、骨形態評価する。これらの結果を元に、最終的な機能型再生骨の製造技術を確立する。 解析に関しては、3D-μCT、自動細胞計測装置(Chemometic社製NucleoCounter)、軟X線撮影(ソフロン社製軟X線発生装置SRO-i505)など必要な設備はすでに現有しており、操作・解析方法についても熟知している。研究の成果は、学会で発表し、国内、海外の科学者と意見交換するとともに、国際科学雑誌にて公表する。
|