鳥インフルエンザウイルスは遺伝子変異により哺乳類間でも感染することが報告され、パンデミックの可能性が高まっている。しかも、抗ウイルス薬やワクチンを十分量確保することは困難で、また、耐性などの問題も指摘され、新しい予防や治療方法開発が急務である。唾液には抗ウイルス作用のある唾液タンパク質が含まれ、唾液タンパク質合成・分泌はcAMPにより制御されている。そして、細胞内のcAMP濃度はアデニル酸シクラーゼによる合成とphosphodiesterase (PDE)の分解により調節されている。また、唾液のほとんどは三大唾液腺(耳下腺、顎下腺、および、舌下腺)より分泌されており、構成細胞としては漿液細胞、粘液細胞、筋上皮細胞、導管細胞などである。しかし、それぞれの唾液腺の構造は異なっている。 ラット舌下腺はadrenergic nervesの作用がほとんどないため全体のPDE活性はほとんどないと考えられたが、顎下腺や耳下腺と同程度のPDE活性を認めていたため、それぞれの唾液腺での各PDE発現を検討したところ、PDE発現がそれぞれの唾液腺で異なっていた。それゆえにそれぞれの唾液腺で特有のPDEが発現し唾液タンパク質合成や分泌を調整している可能性が考えられた。そこでノックアウトマウスの唾液腺を形態学的に更に検討したが野生型マウスとの差を認めなかった。次に、ノックアウトマウスと野生型マウスでの主な唾液タンパク質の発現を検討したが、特に大きな変化は認めなかった。
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