研究課題/領域番号 |
25670857
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
由良 義明 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00136277)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 中性子 / ホウ素化合物 / 炭化ホウ素 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法はホウ化合物をあらかじめ腫瘍に取り込ませ、ホウ素が中性子を捕捉することで飛程距離の短い放射線を発生させ、腫瘍細胞を破壊する治療である。ホウ素化合物として実際の癌治療で主として用いられるパラボロノフェニルアラニン(BPA)は静脈内投与して腫瘍細胞に到達させる。BPAはアミノ酸トランスポーター(LAT)により取り込まれるため、静止期細胞やLATの発現が低下した腫瘍細胞では十分取り込まれない。そこで、高濃度のホウ素を含有する炭化ホウ素(B4C)のナノ粒子を腫瘍内に投与して、組織内照射に準じた方法でBNCTを行い、従来のBNCTでは不十分な効果が得られない腫瘍を消褪させる方法の研究に着手した。リン酸緩衝液(PBS)を用いてB4C球ストック液を調整し、ヒト口腔扁平上皮癌細胞SAS懸濁液にB4C球を50 ppmの濃度で添加して中性子照射を行ったところ、生細胞率と細胞生存率のいずれでも中性子単独よりも低下し、B4C球はBNCTのホウ素化合物としての役割を果たすことが明らかとなった。B4C球の細胞内ホウ素濃度は1 ppm以下であり、細胞外に存在するB4C球が中性子を捕捉して近接する細胞に傷害性を示したと考えられた。マイクロバブル存在下で超音波照射を行うと、細胞内にB4C球の集合体を確認することができ、超音波照射後の細胞を洗浄しても高いホウ素濃度を維持することから、超音波照射による細胞膜穿孔法(ソノポレーション)を用いて炭化ホウ素球を細胞内に導入できることが明らかとなった。一方、PBS懸濁液中で保存すると次第に凝集塊を形成した。そこで、安定的にB4C球を可溶化する媒体の探索を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞ならびにヌードマウス腫瘍に対して炭化ホウ素球を用いて中性子照射を行っても中性子単独と比較して高い細胞傷害性と抗腫瘍効果がみられ、BNCTのホウ素化合物としての有用性が確認された。さらに、超音波を用いたソノポレーションによるB4C球の腫瘍細胞内導入を培養細胞系で確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
B4C球のPBS中での凝集性が明らかとなったため、凝集性を防ぐ可溶化媒体の研究が必要と考えられた。媒体候補として絞り込んだSolubilizer SL-11とPUREBRIGHT MBを用いて、B4C球可溶化し、その細胞毒性、ホウ素化合物溶液としての有用性、ソノポレーションによる培養細胞ならびにヌードマウス腫瘍への導入性について検討する。そのうえで、EGFを結合して、口腔扁平上皮癌で発現するEGFレセプター(EGFR)を標的とした選択性を待たせる方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
B4C球の均一的な可溶化に必要な溶媒の選定に時間を要し、採用試薬の必要量の購入が行えなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
残高を次年度に遂行する可溶化溶媒の購入費用に充てる方針である。
|