申請者は過去の研究において、口腔癌の悪性化に関わる転写調節因子Idの発現が主に脱ユビキチン化によって生じていることを明らかにしてきた。また、すでに12種類の脱ユビキチン化酵素が口腔癌細胞で高発現することを確認している。本研究はこれらの脱ユビキチン化酵素を口腔癌細胞に強制発現させて、Id-1の発現変化を観察した。その結果、USP-1とUSP-3においてId-1の著明な発現上昇を認めた。とりわけUPS-1強制発現株はタンパクレベルで2倍以上の発現を認めるともに、invasion assayにおいて浸潤能が上昇することが確認された。これらの現象が動物実験モデルでも確認されるか検討したところ、USP-1強制発現株の口腔癌細胞はコントロール細胞に比して有意に増殖活性が高かった。またこれらの腫瘍にUSP-1の酵素阻害剤を用いたところ、腫瘍の増大が抑制される結果が得られた。このことから口腔癌の悪性化に関与する転写調節因子Id-1の発現にはUSP-1による脱ユビキチン化が深く関わっており、治療標的になり得る可能性が示された。
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