研究課題
挑戦的萌芽研究
口腔扁平上皮癌の診断や予後予測に有用なバイオマーカーは現在までに報告されていない。MicroRNA (miRNA) は約 22 塩基対の 2 本鎖の RNA であり、蛋白質へ翻訳されないノンコーディング RNA の一種である。MiRNA は標的 mRNA の 3'-非翻訳領域に結合することによりその蛋白翻訳を阻害することが知られている。癌において miRNA は癌遺伝子様あるいは癌抑制遺伝子様の機能を有することが広く知られている。さらに、miRNA は体液中に安定な状態で存在し、検出可能であることが報告されている。そこで、本研究では口腔扁平上皮癌患者の体液中において特異的に存在量が変動する miRNA の同定を試みた。口腔扁平上皮癌患者と健常者の唾液および血清より miRNA を抽出精製し、マイクロアレイを用いた網羅的発現解析を行った。つづいて、有意に発現変動のあった miRNA について RT-PCR 法で発現定量解析を行った。網羅的発現解析の結果、健常者と比較して口腔扁平上皮癌患者の唾液では、20 種類の miRNA の存在量が減少していた。一方、血清では、12 種類の miRNA の存在量が減少し、2 種類の存在量が増加していた。その中でも、miR-191 は唾液および血清に共通して存在量が減少していた。さらに、RT-PCR 法では血清中の miR-26a と miR-191 の存在量が口腔扁平上皮癌患者において有意に減少していた。 また、miR-26a はヒト口腔扁平上皮癌細胞に対して増殖抑制効果を有していた。以上の結果より、口腔扁平上皮癌患者において血清中の miR-26a と miR-191 は有用なバイオマーカーとなり、miR-26a は先制医療のツールとなる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
口腔癌患者体液中で特異的に存在量が変動する microRNA を同定できた。
生体内への microRNA の補充方法について検討する。送達媒体としてアテロコラーゲンと核酸結合ペプチドの有用性を検討する。
RT-PCR 法による十分な発現定量解析が行えなかったため。RT-PCR 法による発現定量解析と生体への合成核酸の投与方法について検討する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Neoplasia
巻: 15 ページ: 805-814