研究課題
歯は口腔上皮細胞のある特定の領域の細胞が、歯原性細胞へと分化し、その発生が始まるが、この口腔上皮細胞から歯原性上皮細胞へと変わる分子制御学的機構については、不明な点が多い。CD9は分子量24kDa単鎖糖タンパクで、テトラスパニンスーパーファミリーに属する。テトラスパニンは生体内に広く存在し、膜4回貫通型タンパク質で、生体内における機能解析は不明な点が多く存在しているが、テトラスパニンが他のタンパク質と会合して複合体を形成することによって、細胞間の接着やシグナル伝達、細胞の運動に関与しているとして注目されている。我々は、バイオインフォマティカル解析法を用いて、歯の発生過程においてCD9が有意に発現していることを見出した。さらに、非常に興味深いことに、このCD9の発現を歯の発生過程において免疫組織学的に観察したところ、口腔上皮から歯原性上皮へと分化が移行したと考えられる基底細胞において、このCD9の発現が消失することがわかった。このことは歯の発生の初期においてデンタルプラコードの形成にテトラスパニンが関与していることを示唆する。実際、その他のテトラスパニンについて発現を検討したところ、Cd81、Cd82、Cd151、Tspan8も発現が観察された。これらテトラスパニンファミリーは細胞から分泌されるエクソソームのマーカーとして知られている。エクソソームは細胞内の小胞輸送を介して細胞外へ放出される直径30~100nmほどの細胞外小胞の一種であり、内部にはタンパク質、脂質、核酸などが含まれている。これらは細胞外に分泌された後に、細胞外液を通じて隣接する組織に取り込まれ、細胞間情報伝達の担い手として機能している。つまり、歯の発生における上皮間葉相互作用の役割を担っている可能性が示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR MEDICINE
巻: 36 ページ: 442-448
10.3892/ijmm.2015.2247
PLoS ONE
巻: 10 ページ: e0121667
DOI10.1371/journal.pone.0121667