研究実績の概要 |
こどもは社会の宝であり神秘的可能性を秘めた存在である。小児歯科学のスローガン『乳歯は生命の源である』がその具体例のひとつである。少子化と高齢化の日本社会で高齢者医療に貢献できるライフサークルを網羅した新規医療の開拓が小児歯科医療の使命である。我々は永久歯との交換による『自然脱落直後の乳歯歯髄に多分化能や免疫制御能をもつ間葉系幹細胞が保持されている』ことを発表した。そこで本研究課題ではトランスレーショナルリサーチ推進の視点から、骨粗鬆症モデルマウスを用いて『乳歯幹細胞療法の老齢者骨粗鬆症への応用の可能性』を解き明かし、疾患予防と進行抑制をもたらす新薬開発の糸口を開拓する。 ヒト乳歯歯髄組織から通報により単離した間葉系幹細胞(SHED)を骨粗鬆症モデルマウスに静脈投与した。SHED投与したマウス群の長管骨をマイクロCTで測定したところ、骨密度の回復が認められた。また、長管骨を組織学的に観察したとこと、SHED投与群では骨が細胞数の増加とTRAP陽性細胞の減少が認められ、遺伝子発現解析では、骨関連遺伝子(Runx2, Alp, and osteocalcin)発現の上昇が認められた。また、血清中の骨吸収に関連するsRANKLとC-terminal telopeptides of type I collagen(CTX)の濃度をEISA法で測定したところ、2つの因子ともにSHED投与群では減少していた。このことから、SHEDの全身投与は骨形成を促進するとともに、骨吸収を抑制することが示唆された。 現在、SHEDによる骨形成促進と骨吸収抑制のメカニズムについて詳細な解析を行っているところである。
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