研究課題
これまで収集された動物サンプルまた実験期間中に新たに収集された動物サンプルを使用して各種分析を行った。被災動物の歯のイメージングプレート像では明瞭な放射性物質の存在が認められた。警戒区域内で捕獲したウシ臼歯の縦断標本とそのIP像では、放射性物質が形成途中の歯や骨面に分布しており、形成が完了している歯の中にはほとんど認められなかった。これらのウシの歯の中に含まれる核種をゲルマニウム半導体検出器により同定したところ、γ線放出核種としてはCs-137,134のみが認められ、他の核種については有意の存在が認められなかった。測定環境で24時間測定での検出限界はCs-137で0.5mBq/g 、Cs-134で0.7mBq/g であり、試料の種類には依存せず原則同じ値であった。同様にSr-90の測定限界は、われわれの測定環境で24時間測定の場合、0.8mBq/g となった。これらのSr-90の値は、おそらく過去の核実験やチェルノブイリ原発事故に由来するものと考えられ、このレベルが、現時点での基準値(コントロール値)になると考えられた。いずれにしてもコントロール歯の値と、検出限界値には5-10倍以上の開きがあるので、十分に信頼性のある測定が可能と考えられる。動物が棲息する環境中の空間線量や土壌線量と歯の中の放射性物質の量には高い相関がみられた。高線量地域の野生アカネズでは、切歯中に含まれる放射性物質の濃度が高かった。一方、対照地区の切歯内にはCs-137は検出されなかった。また高線量地域で捕獲した被ばくニホンサルの歯と、コントロールサルの歯についてESRのシグナルを比較した結果、コントロールに比べて3-5倍程度のラジカルが存在した。ヒトに近いサルの歯でこのような違いがみられることは、ヒトにおいても比較的低線量の違いを、歯を用いて検出できる可能性を示すものと考えられる。
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