本研究は、嚥下障害が疑われる高齢の患者が、義歯の治療を受けた後、適合良好な義歯を装着することで嚥下機能に変化がみられるか観察を行った。対象者の適格基準は、義歯の治療を必要とし嚥下障害が疑われる65歳以上の患者で、除外基準は、脳卒中急性期や神経難病を有する患者、食物の認知が不可能な認知機能低下が重度の患者、嚥下造影撮影や歯科治療が困難な患者とした。方法として、患者に嚥下訓練を施行後、義歯の治療を行い、義歯治療後直ちに嚥下造影検査を義歯装着前後で実施し、さらに2週間後に義歯の装着前後で嚥下造影検査を実施した。 83歳男性で無歯顎患者2名に研究の同意が得られた。嚥下訓練後で義歯治療前は、2名の摂食状況のレベルは、嚥下食を3食とも経口摂取しているが代替栄養は行っていない状況だった。義歯治療後は、両者とも通常食を3食摂取するまで摂食状況が回復していた。摂取エネルギー量は、義歯治療前に比較し義歯治療後は300~400kcal増加していた。嚥下造影検査の結果として、義歯を装着することで嚥下時における検査食の梨状陥凹残留が消失した者がいた。また、治療前に、嚥下時の口腔内残留が認められた者は、義歯治療後に口腔内残留が消失しており、義歯治療によって嚥下機能が回復する可能性が示唆された。
|