歯周病が全身に及ぼす影響について、我々は歯周病が肝臓の脂肪化に炎症、線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic steato-hepatitis (NASH)を引き起こしている可能性を疫学調査にて発表している。NASHの発症については、肥満などによる脂肪肝の状態である1st Hitに、エンドトキシン(LPS)や様々なサイトカイン刺激による2nd HitによりNASHに進行し、さらに血管における継続的な炎症とあわさって肝硬変、肝癌へ進行するといわれている。(Two hit story)NASH患者の歯周病菌保有率が健康な人と比べて約3.9倍もの高率で、歯周病のあるNASH患者10人に歯周治療を行うと3カ月後に肝機能の数値がほぼ正常になったとの報告もあることから、歯周病はNASHの2nd Hit に関与している可能性がり、本研究では2nd hitに関わる因子としての歯周病による影響を詳細に解析することを目的とする。 NASHの発症や病態の進行において、肥満と関連が深く歯周病によりその産生が確認されているTNF-αは炎症による肝障害やインスリン抵抗性の発現に重要であり、TGF-βは肝線維化に深く関与している。我々はヒト肝細胞株であるHepG2細胞に歯周病原菌由来LPSを加えることで、TGF-βを産生することを確認した。これら炎症性サイトカインに加え、本研究では接着因子の1つであるICAM-1や発がんとも関連するMMP-9産生を確認しており、炎症と血栓形成に与える影響を動態的に明らかにしつつある。本研究では、現在、3D培養の条件を整えており、血管内皮細胞と好中球や単球との相互作用および肝細胞との相互作用を共培養システムにて解析中である。
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