研究課題/領域番号 |
25670897
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
坂上 宏 明海大学, 歯学部, 教授 (50138484)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, その他の研究科, 准教授 (30458963)
田中 庄二 明海大学, 歯学部, 講師 (60105616)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グリシン / プロリン / コラーゲン / メタボローム解析 / 老化マーカー / 代謝異常 |
研究概要 |
加齢に伴い唾液中のグリシン、プロリン濃度が上昇し、しかも、その比率が被験者の年齢にかかわらず、コラーゲンに存在する値に等しいことから、コラーゲン代謝の異常の可能性が生じた。今回は、コラーゲンを合成するヒト正常口腔細胞を用いて、無刺激時、およびLPSあるいはIL-1βで炎症を惹起した場合に、アミノ酸の産生・消費がどのように変動するかを検討した。明海大学で樹立した歯肉線維芽細胞、歯髄細胞、歯根膜線維芽細胞は、一週間で1:4スプリットで継代培養を繰り返すと、約30~40回の分裂後増殖を停止し、老化状態に達した。今回は、10~20代の細胞を用いて、1時間の培養時間あたりの各アミノ酸の産生量の変化をHPLCを用いて検討した。無刺激の細胞では、いずれも、グルタミン酸、グルタミンの産生が最大であり、グリシンはその1/3程度であり、プロリンは1/10以下であった。次に、炎症を惹起した場合の効果を検討した。IL-1βで処理することにより、歯肉線維芽細胞によるPGE2、IL-6、IL-8、MCP-1などの炎症性物質の産生は2桁増加した。この炎症を惹起した細胞において、グルタミン酸、グリシンの産生は、顕著に増加したが、グリシンの産生は、1/3程度であり、プロリンの産生はごく僅かであった。5 mM濃度以下のグリシン、およびプロリンは、細胞増殖および、IL-8の産生に対しては、ほとんど影響を与えなかった。 細胞内代謝産物の変動のメタボローム解析に必要な基礎的な条件設定(洗浄あるいはトリプシン処理による代謝産物の漏出の検討)を行った。細胞を洗浄する場合、5%マンニトールを用いることが最も、細胞から低分子性代謝産物の漏出が少ないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度で、グリシンとプロリンの産生が、グルタミン酸とグルタミンの産生に比べて低かった理由として、使用した細胞が、まだ老化状態に到達していなかったことが考えられる。平成26度では、末期の老化細胞を用いた可能性を検討すべきである。
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今後の研究の推進方策 |
口腔正常細胞が老化末期において、コラーゲン代謝の異常をきたす可能性があるので、老化細胞を用いて、細胞外液中のグリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンを明海大学歯学部に新規に設置されたQPLCを用いて解析する。また、細胞内代謝産物の変動については、慶應大学と連携してメタボローム解析を進める。 口腔内細菌によるヒドロキシプロリンのプロリンへの分解の可能性を検討するため、コラーゲンペプチドを基質にして、細菌溶解液と混合し、生成された産物をQPLCにて解析する。また、イソジンで含嗽して殺菌した場合の唾液中のグリシン、プロリンンの比についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、線維芽細胞からコラーゲンを構成するアミノ酸のグリシンとプロリンの量が予想外に低い値を示してしまったため、実験のデザインを多少変更したためである。 次年度は、後期老化課程におけるグリシンとプロリンの産生の解析を新たに追加することにより、翌年度と合わせて使用する予定である。
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