研究課題/領域番号 |
25670900
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
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研究分担者 |
坂野 雄二 北海道医療大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10134339)
豊福 明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10258551)
松島 英介 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50242186)
安彦 善裕 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90260819)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつ病 / ストレス / ドライマウス / 自殺予防 / 抑うつ状態 / 歯科医療 / 歯科心身症 |
研究概要 |
平成25年度はドライマウス研究会会員2,300名に対して開業歯科医師がうつ病を疑い精神科に紹介した数やうつ病に関する実態調査を行った。このアンケート調査の質問項目選定に関して研究代表者と研究分担者とで協議の上、正しいと思う場合は「正」、間違っていると思う場合は「誤」の回答式にした。質問項目はうつ病に対する認識の実態調査の部分と「ある患者さんが「うつ病」だと診断されるとき、以下にあげた患者さんの訴えは、その方がうつ病であるかどうかの判断にどれだけ重要であると思いますか?当てはまる数字でお答えください。」とし「重要か重要でないか」の5段階評価とした。現在までのアンケートの回収状況は配信数の約10%であり240余名の返信を得た。これら集積したデータを現在統計学的に解析し、歯科医療従事者のうつ病に対する現状認識やうつ病に対する対応方法についての現状を把握するための検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自殺予防を目的としたうつ病の早期発見では、かかりつけ身体科医にその役割を担うことが期待されてきた。しかしながら、家庭医制度のない本邦では、かかりつけ医の数は減少している。また、家庭医制度のある欧米でも、かかりつけ医のうつ病の発見には限界があり、うつ病の見逃しが30~50%存在すると言われている。一方、歯科医師は、開業歯科での診療が大半を占め、より地域密着型で国民の70%程度はかかりつけ歯科医がいると言われており、家庭医としての役割が大きい。さらにうつ病あるいは抑うつ状態の患者は、味覚異常や口腔乾燥感、義歯不適合感などの様々な口腔症状を訴えることも多く、潜在的に相当数の患者が歯科を初診しているものと推測される。そこで、これまでの、かかりつけ身体科医ではカバーしきれなかった部分を歯科医師が補う形で自殺予防のゲートキーパーとなるための調査研究を行うことが本研究課題の目的である。 また、うつ病予防のために、ストレス状態にある人やうつ病のハイリスクの状態にあるMedically unexplained symptom(MUS)の患者もスクリーニングし、早期対応の一助としたい。歯科心身症の多くは口腔のMUS の範疇であり、歯科医師がMUS をみつけることも多いことから、初年度は研究代表者が主催するドライマウス研究会会員2,300名にメールでアンケート調査を実施し、現在その統計解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施した開業歯科医師がうつ病を疑い精神科に紹介した数やうつ病に関する実態調査の統計解析を推進する。 一方、健常者とうつ病患者を対象にうつ病のスクリーニングの項目の確立を試みる。すなわち、抑うつ傾向を伴った患者が多く来院する鶴見大学「ドライマウス外来」、北海道医療大学「口腔内科相談外来」、東京医科歯科大学「歯科心身医療外来」で,心療内科または精神科でうつ病の診断を受けた者および歯科医師によってMUS と診断された者を対象として解析する。コントロール群は、構造化面接(心理士によるSCID)でうつ病が認められなかった者を用いる。 次にうつ病の診断がついている患者の口腔症状を分析し、口腔に関する項目を抽出するとともに,「うつ対応マニュアル-保健医療従事者」(厚生労働省)およびうつ病患者に対する感受性の高さが確かめられている二質問紙法の項目から項目を抽出する。 さらに、唾液に関する項目として、安静時および刺激時の唾液分泌量、唾液のpH および唾液のコルチゾール、S-IgA、クロモグラニンA、メラトニン、アミラーゼの濃度を計測する。上記の調査・検討を行い,ロジスティック回帰分析から健常者とうつ病患者を鑑別できた項目をうつ病スクリーニングの初期選定項目として検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は大きく3つの研究からなるが平成25年度は開業歯科医院の精神科・心療内科紹介率に関する実態調査であり、うつ病に対する歯科医師ならびに歯科医療従事者の現状認識に関してアンケート調査を優先的に行った。このことから研究代表者や研究分担者で選出したアンケート調査の質問項目の協議もメール等を使用して実施されたことで旅費などの支出も限定され、次年度に行われる研究打ち合わせに充当することとした。加えて、うつ病のスクリーニングための指標を検出する研究に関しては、平成25年度には大きな進展はなく、実質的に試薬などの物品の使用が少なくなったことと思われ次年度に積極的な取り組みに備えたい。 前年度に実施したドライマウス研究会の会員に対し2,300名を対象としたアンケート調査結果の統計学的解析を研究代表者や研究分担者の施設で行い、これらの成果を検証するための研究打ち合わせ会を実施する。さらにうつ病のスクリーニングマーカーを検出する目的で、患者ならびに健常者の唾液を用い安静時および刺激時の唾液分泌量、唾液のpHおよび唾液のコルチゾール、S-IgA、クロモグラニンA、メラトニン、アミラーゼの濃度を計測し、うつ病の指標となり得るかを検証する。
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