研究課題/領域番号 |
25670901
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福岡医療短期大学 |
研究代表者 |
井上 勇介 福岡医療短期大学, その他部局等, 教授 (20105688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 歯学 / 微生物 / 抗菌性 / 口腔ケア |
研究概要 |
1)人工脂質の合成:ラウリル酸、L-Alanine、p-Toluenesulfonic acidをトルエン中で水を除去しながら反応させた後、反応物をアセトニトリル中で再結晶を繰り返し、減圧乾燥してL-Alanine decyl ester p-toluene sulfonic acid salt(以下C12-L-Alaと略す)を合成し、白色の合成物を得た。 2)C12-L-Alaおよびプロタミンとアニオン性高分子からの抗菌・抗真菌複合体の合成:合成したC12-L-Alaとアニオン性高分子(アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース)を水溶液中で撹拌して反応させ、水洗と遠心分離を繰り返した後、凍結乾燥してC12-L-Alaベースの複合体を合成し、白色の合成物を得た。同様にプロタミンと上記のアニオン性高分子から、プロタミンベースの複合体を合成し、白色の合成物を得た。 3)各種複合体の抗菌・抗真菌試験:抗菌・抗真菌性試験に用いた細菌はStreptococcus mutans、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、真菌はCandida albicansであった。抗菌・抗真菌試験は、マイクロプレートリーダーを用いた吸光度法により最小発育阻止濃度(MIC)で評価した。C12-L-Alaとアルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースの複合体の、Pseudomonas aeruginosaへの抗菌性は認められなかった。Candida albicansへの抗真菌性は認められた。プロタミンとアルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースの複合体の抗菌・抗真菌性の傾向は人工脂質複合体と同じであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C12-L-Alaおよびプロタミンとポリグリコール酸、アスパラギン酸、ポリグルタミン酸との合成は他のアニオン性高分子(アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース)と同じ合成法では、収量が少なかったので他の合成法を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
1)水中および人工唾液中における徐放性の検討:抗菌・抗真菌性を示した複合体を蒸留水中に浸漬し、浸漬後1日、7日、14日、30日後の各々の浸漬液および浸漬後の複合体の抗菌・抗真菌性を評価する。また、人工唾液中に同様の日数浸漬した後の浸漬液および複合体の抗菌・抗真菌性について評価し、徐放性について検討する。 2)義歯安定剤、歯磨剤の試作と抗菌・抗真菌性および徐放性の検討:市販義歯安定剤の基本組成を基に義歯安定剤を試作したのち、試作義歯安定剤に合成した各種複合体を比率を変えて配合し、抗菌・抗真菌性について評価する。また、1)と同様に水中および人工唾液中での徐放性を検討する。 3)市販歯磨剤の基本組成を基に歯磨剤を試作し、試作歯磨剤に合成した各種複合体を比率を変えて配合し、抗菌・抗真菌性について2)と同様に評価する。また、同様に水中および人工唾液中での徐放性を検討する。 4)複合体とメタクリレートモノマーとの相溶性の検討:メタクリレートモノマーには、歯科で汎用されるメチルメタクリレート、2ヒドロキシエチルメタクリレートを選択して相溶性を検討し、溶解性が認められた複合体について最大溶解率を測定する。 5)抗菌・抗真菌性の義歯床用レジン、リベース材の検討:メチルメタクリレート、2ヒドロキシエチルメタクリレートに相溶性が認められた複合体を溶解させ、重合する。重合後に重合体の抗菌・抗真菌性および徐放性の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用予定であった旅費(老年歯科医学会および日本歯科理工学会への参加)を使用しなかったため。 次年度は、学会参加に係る旅費および物品費(試薬、マイクロプレート、培地、抗菌・抗真菌試験用器具 等)に使用する計画である。
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