研究代表者が合成した抗菌性を有するL-Alanine decyl ester p-toluene sulfonic acid salt(C12-L-A1aと略す)および抗菌性を有するプロタミンは生体内でも比較的安全であるが、生体内で早期に分解する。そこで、C12-L-A1aとプロタミンを各々アルギン酸、ヒアルロン酸、力ルボキシメチルセルロースと反応させ、新規の抗菌性複合体を合成し、これらの複合体の口腔細菌に対する抗菌スペクトルおよび複合体からの抗菌成分の徐放性、高齢者が用いる義歯安定剤、歯磨剤に配合して口腔細菌の抑制を図り、口腔ケアの向上に寄与することを目的とし検討を行った。また、メタクリレートモノマーへの溶解が可能であれば義歯床用レジン、リベース材への応用も可能と考え検討を行った。 抗菌スペクトルでは、Pseudomonas aeruginosaへの抗菌性はいずれの複合体も抗菌性は認められなかったが、Streptococcus mutans、Staphylococcus aureusは認められ、Candida albicansへの抗真菌性も認められた。 義歯安定剤と歯磨剤を試作し、試作した義歯安定剤、歯磨剤に複合体を1~10wt%添加して抗菌性の検討を行った。抗菌性は複合体を10wt%添加しないと認められなかった。 歯科で汎用されるモノマーであるMMA(メチルメタクリレート)、2HEMA(2ヒドロキシエチルメタクリレート)を選択して相溶性を検討した。まず、すべての複合体をミルにて微粉砕し、粉末をMMAおよび2HEMAに各々1~10wt%添加し、相溶性の検討を行った。複合体粉末は各々のモノマーに対して難溶性であったため、複合体粉末をモノマー中で分散させてそのまま常温重合を行った。重合体では10wt%添加では抗菌性は認められたが、それ以下の濃度では抗菌性が認められなかった。
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